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[W18-03] カイガラムシ類のフェロモンとその利用
カイガラムシ類のメスは生涯のほとんどを植物上に固着した状態で過ごす。したがって、有性生殖を行う場合には、自らの居場所にオスをいざなうために揮発性の高い信号物質(フェロモン)を放出する。これらの物質は同種のみに作用することが望まれるので、進化的帰結としてカイガラムシ類のフェロモンには種ごとに固有な構造がみられる。カイガラムシ類の生活環においてフェロモンは重要な役割を果たすことから、これらの物質を人工的に合成すれば、農林業害虫として知られるカイガラムシ類の防除にも活用できる可能性が高い。このように、カイガラムシ類のフェロモンは基礎的にも応用的にも魅力のある研究対象といえる。しかしながら、フェロモンの構造決定には少なくとも正確に同定された生体の確保が必須であるが、カイガラムシ類の場合はこれが難しく、実際には飼育できる種以外ではあまり研究が進んでいない。一方で、カイガラムシ類の中でも、コナカイガラムシ科の害虫には比較的飼育しやすい種が含まれ、これらの昆虫のフェロモンについては過去20年の間にある程度の研究事例が蓄積され、防除にむけた応用研究も実施されている。本講演ではこれらの研究事例を紹介し、分類から防除技術開発までシームレスに研究を推進することの重要性を再確認したい。