日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W19] ハチ目研究者の集い

2024年3月31日(日) 17:00 〜 18:30 E会場 (小会議室1)

世話人:岡安樹璃也、廣瀬勇輝

17:45 〜 18:30

[W19-02] 植物用殺菌剤による捕食寄生性昆虫の見えざる死:その普遍性と圃場での実態の検証(予報)

◯藏滿 司夢1 (1. 筑波大学)

寄生バチ類や寄生バエ類に代表される捕食寄生性昆虫は、農業害虫を含む様々な昆虫類にとって重要な天敵である。IPMの考えのもと、特に化学殺虫剤の利用においては捕食寄生性昆虫を含む有用天敵への影響を考慮することの重要性が広く認識されている。一方で、化学殺菌剤が有用天敵にもたらす影響は十分に評価されているとはいえない。そのような状況の中、日本の農業現場で多用されている化学殺菌剤ベノミルが、植食性害虫の体内での寄生バチ類の寄生を妨げている可能性が示唆された。新川(2020)は、アオムシコマユバチに産卵されたアオムシがベノミルを含む餌を摂取すると、寄生が100%失敗し、アオムシがモンシロチョウへと生存することを報告している。ベノミルが100品目を超える作物に適用されていることを鑑みると、この現象が捕食寄生性昆虫に対して普遍的なものであれば、農業生態系で有用捕食寄生性昆虫が甚大な影響を受けている可能性が懸念される。演者らは現在、環境研究総合推進費の委託研究として、同殺菌剤が寄生バチ、寄生バエ類に与える影響の普遍性と圃場での実態の解明に取り組んでいる。本講演ではその経過を報告する。