日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W20] ミツバチ分子生物学の現在地

2024年3月31日(日) 17:00 〜 18:30 F会場 (小会議室2)

世話人:宇賀神篤

17:00 〜 17:25

[W20-01] フェロモンと受容体を対応づける新たなアプローチの探索-脱シラミ潰しのために-

◯宇賀神 篤1,2、佐々木 哲彦2 (1. JT生命誌研究館、2. 玉川大・ミツバチ科学)

社会性昆虫にとって,フェロモンを用いた個体間コミュニケーションは社会の維持に不可欠である。繁殖分業,育児,採餌,防衛といった様々な局面において,それぞれ寄与する情報化学物質の存在が報告されている。しかし,個々のフェロモンがどのように異なる「意味」をもたらすのか,その仕組みは多くが不明のままである。
 フェロモン受容の分子機構を明らかにする上では,対応する受容体の同定が不可欠である。ミツバチは約170個もの嗅覚受容体遺伝子(OR)を持つ。これら多数のORを半ばシラミ潰しに解析するには多大な労力が必要となり,現在までに受容体との対応づけがなされているものは2物質にとどまる。嗅覚系には「一種類の嗅神経細胞には基本的に一種類の同じORしか発現しない」という特有の一対一関係が存在する。演者らは,対象の化学物質に反応する嗅神経細胞を先に絞り込み,その細胞に選択的に発現するORのみを解析することで省力化が可能ではないかと考えた。神経活動マーカー遺伝子を用いたアプローチの可能性について議論したい。