日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

小集会

[W20] ミツバチ分子生物学の現在地

2024年3月31日(日) 17:00 〜 18:30 F会場 (小会議室2)

世話人:宇賀神篤

17:45 〜 18:05

[W20-03] 有用形質をもつミツバチの系統樹立を目指して

◯峰 翔太郎1、野村 哲郎2、横井 翔1、木村 澄3、畠山 正統1 (1. 農研機構、2. 京都産業大学、3. プラチナバイオ)

セイヨウミツバチ(Apis mellifera)は、農業生産に深く関わる世界的に重要な受粉媒介者である。しかし、近年ミツバチはウイルス感染、寄生虫、化学物質への暴露による深刻な健康脅威に直面している。これら問題の解決策のひとつとして、CRISPR/Cas9や育種技術を用いた健康な系統の確立が挙げられる。

CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集システムはミツバチにも適用可能であり、特定の遺伝子を正確に改変することができる。本研究グループはすでにミツバチにおいて4つの遺伝子を標的とするノックアウトに成功し、各遺伝子について様々な欠失を生じさせることに成功した。

伝統的な育種では、有用形質を持つ個体の交配が行われるが、多くの場合近親交配が利用される。しかしミツバチのもつ性決定様式は近親交配を行うことで二倍体オスの出現を引き起こしコロニーにとって大きなコストとなるため避ける必要がある。

今回は、ミツバチにおけるゲノム編集の現状を取り上げ、二倍体オスの出現を防ぎながら安定した系統を維持する戦略を探る。遺伝的多様性を管理し、近交弱勢を回避することは、ミツバチ集団で系統の確立を成功させるために極めて重要である。