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[W21-03] 昆虫写真家山口進氏が好蟻性生物研究に与えた影響
2022年冬に急逝された昆虫写真家山口進氏は、昆虫と植物の共生を主たるテーマとして、40年以上もの長きにわたり世界中の昆虫・植物の写真を撮影し、写真を介して生物の多様性を広く伝えてきたことで著名である。特に、同氏が1988年に発表した『五麗蝶譜』は、国内に生息する好蟻性シジミチョウ5種全てについて、足かけ13年におよぶ長期のフィールドワークで収集した、卵から成虫までの各ステージにおける宿主アリとの関わりを鮮明な写真で紹介する画期的な写真集であり、好蟻性生物の生態資料としての価値を国際的に評価された。以降も好蟻性生物を中心として、生態解明を志す研究者への協力を積極的に続けてこられた。研究材料としたくとも、発見すること自体が至難な種を多く含む好蟻性生物の研究推進に際し、同氏の献身的な助けは大きな力となったものである。とくに日本における好蟻性シジミチョウの化学生態学研究において、強い後押しとなったと言えよう。また学生を含む若手研究者には豊富な知見を惜しみなく伝えられ、好蟻性生物勉強会の第一回開催に際しては氏の自宅を開催場所として提供いただいた。同会の参加者からは、優秀な研究者が多く育っている。本講演では、追悼の意を込めて、好蟻性生物研究への山口氏の貢献について紹介したい。