第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

オーラルセッション

[O-1] 回復期 O-1

2021年7月11日(日) 10:35 〜 11:35 対面会場(200名)/サテライト会場/Web会場①(ウェビナー3000名) (2階グランドホール)

座長:青木 修(四條畷学園大学)

10:45 〜 10:55

[O-1-02] 階段降段動作で右側方への安定性低下および疼痛を認めた左人工膝関節全置換術の一症例

*村上 鈴夏1、井尻 朋人1、鈴木 俊明2 (1. 喜馬病院、2. 関西医療大学大学院 保健医療学研究科)

【症例紹介】
本症例は、左変形性膝関節症と診断され、左人工膝関節全置換術を施行された70歳代の女性である。主訴は「階段を痛みなく安全に降りたい」であり、ニードを「階段降段動作の安定性向上・疼痛改善」とした。今回、評価は術後1ヵ月目に行った。
【評価とリーズニング】
本症例は、階段降段動作の左制御下降期に右側方への不安定性が生じ、左膝関節内側に疼痛を認めた。左制御下降期に左膝関節屈曲、左足関節背屈による下腿前傾が乏しかった。次に左股関節内転による骨盤右下制が生じていた。また、左踵離地時に左距骨下関節回内に伴い下腿外側傾斜と下腿外旋が生じていた。この時、左膝関節内側に疼痛が生じていた。左膝関節内側の疼痛についてNumerical Rating Scale(以下NRS)を用いて評価を行った結果、5点であった。前下方への身体移動が困難であることから、下段へ右足底接地を行うために代償動作として左股関節内転による骨盤右下制が生じたと推察した。徒手筋力検査では左膝関節伸展3であった。筋緊張検査では左内側ハムストリングス、大腿筋膜張筋は正常域であったが、左内側広筋の筋緊張低下を認めた。疼痛は、非荷重位での膝関節単独運動でも生じており、他動での下腿外旋で疼痛の再現性を認めた。また、膝関節自動伸展の最終域に下腿外旋が増大しており疼痛が生じていたが、徒手にて下腿内旋を誘導することで疼痛は消失した。評価の結果、下腿外旋が増大することで左膝関節内側部に疼痛が生じ、降段時の左膝関節屈曲が乏しくなっていると推察した。階段降段動作において、内側広筋は下腿の外旋制動に関係していると報告されており、内側広筋の筋力強化を行うことで下腿外旋が軽減し疼痛軽減につながると考えた。
【介入と結果】
治療は2週間行い、左膝関節伸展(内側広筋)筋力強化を目的とした下腿近位部への徒手抵抗エクササイズ、動作練習として階段降段練習を疼痛自制内で実施した。治療後、階段降段時の右側方への不安定性は軽減した。また、左踵離地時の下腿外旋は軽減し、左膝関節内側部の疼痛はNRS 5から1点に改善を認めた。徒手筋力検査にて左膝関節伸展は3から4へ改善を認めた。
【結論】
治療後に降段動作が安定した要因として、左内側広筋の筋力強化を行ったことで左下腿外旋の制動が可能となり、左膝関節内側部の疼痛が軽減したことが考えられる。さらに、疼痛軽減および左膝関節伸展筋力が向上したことで左膝関節屈曲、左足関節背屈による下腿前傾が増大し、前下方への身体移動が可能となった。その結果、左股関節内転による骨盤右下制、体幹右傾斜が減少したことで右側方への不安定性が軽減したことが考えられる。今回、内側広筋へのアプローチを行うことで下腿外旋増大によって生じていた疼痛が軽減し、安定性向上につながることが示唆された。
【論理的配慮・説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、症例報告の趣旨を本人に説明し、書面にて同意を得た。

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