12:25 〜 12:35
[O-3-05] 階段昇段時に左後方への安定性低下を認めた右大腿骨頸部骨折術後の一症例
【症例紹介】
本症例は右大腿骨頸部骨折術後の70歳代の男性である。X年Y月Z日、自宅で転倒して受傷し、Z+3日に人工骨頭置換術を施行され、Z+26日から当院での外来リハビリを開始された。主訴は「階段は踏ん張らないと昇れない」、「お尻がだるくなる」であり、ニードを「階段昇段動作の実用性向上」と設定した。
【評価とリーズニング】
本症例は階段昇段動作の右荷重受容相から右引き上げ相にて、左後方への安定性低下を認めていた。右足を上の段に乗せた状態での階段昇段動作にて、右体重受容相での右股関節内旋による骨盤右回旋が乏しく、引き上げ相で右股関節外旋による骨盤左回旋が増加した。これらにより、左半身が支持基底面の左後方に逸脱しそうになり安定性低下に繋がったと考えた。また、右足部外転、右股関節外転、右股関節屈曲による体幹前傾、体幹右側屈、努力的な右膝関節伸展も生じており、これらにより右前上方移動をおこなっていた。検査測定において、関節可動域検査では右股関節内旋は-5°であった。一方、徒手筋力検査では右股関節内旋は4であった。また、動作時に「お尻がだるくなる」との訴えもあり、訴えのあった部位と一致する右大殿筋上部線維の筋電図測定をおこない、健常者と比較した。健常者では引き上げ相初期に波形は大きくなり次第に小さくなるが、本症例は引き上げ相初期以降も持続した波形が確認された。これは、引き上げ相で右股関節屈曲による体幹前傾、右股関節外旋による骨盤左回旋が生じるため、それらの制動として大殿筋上部線維が遠心性に作用し持続した波形が生じたと考えた。以上のことから右股関節内旋による骨盤右回旋が生じることで動作が改善し、殿部の怠さも改善すると考え、右股関節内旋可動域拡大を目的とした介入をおこなった。
【介入と結果】
治療は、右股関節内旋可動域練習を20分1回介入で実施した。治療後、階段昇段動作の安定性は向上し、努力的な動作、殿部の怠さも改善された。右体重受容相での右股関節内旋による骨盤右回旋は増加し、引き上げ相での右股関節外旋・骨盤左回旋は消失した。また、同時期の体幹右側屈、右足部外転も減少し、右股関節屈曲・外転、努力的な右膝関節伸展も軽減した。検査・測定において、関節可動域検査では右股関節内旋は-5°から10°と改善を認めていた。また、筋電図測定においても、大殿筋上部線維の筋活動は健常者と類似した波形となった。
【結論】
引き上げ相での右股関節外旋による骨盤左回旋は、右前上方への移動を代償するために骨盤左回旋位で股関節外転させる中殿筋後部線維の活動増加により生じていたと考えた。右股関節内旋可動域が改善したことで動作時に左半身が支持基底面から逸脱することがなくなり動作改善に至ったと考えた。大殿筋上部線維の筋活動について、本症例は階段昇段時に右股関節屈曲による体幹前傾と、引き上げ相での右股関節外旋による骨盤左回旋が生じていた。そのため、大殿筋上部線維の遠心性作用が大きくなった結果、持続的な筋活動が生じたと考えた。
【倫理的配慮、説明と同意】
今回の症例発表に際し、症例に対し十分な説明を行い、同意を得た。
本症例は右大腿骨頸部骨折術後の70歳代の男性である。X年Y月Z日、自宅で転倒して受傷し、Z+3日に人工骨頭置換術を施行され、Z+26日から当院での外来リハビリを開始された。主訴は「階段は踏ん張らないと昇れない」、「お尻がだるくなる」であり、ニードを「階段昇段動作の実用性向上」と設定した。
【評価とリーズニング】
本症例は階段昇段動作の右荷重受容相から右引き上げ相にて、左後方への安定性低下を認めていた。右足を上の段に乗せた状態での階段昇段動作にて、右体重受容相での右股関節内旋による骨盤右回旋が乏しく、引き上げ相で右股関節外旋による骨盤左回旋が増加した。これらにより、左半身が支持基底面の左後方に逸脱しそうになり安定性低下に繋がったと考えた。また、右足部外転、右股関節外転、右股関節屈曲による体幹前傾、体幹右側屈、努力的な右膝関節伸展も生じており、これらにより右前上方移動をおこなっていた。検査測定において、関節可動域検査では右股関節内旋は-5°であった。一方、徒手筋力検査では右股関節内旋は4であった。また、動作時に「お尻がだるくなる」との訴えもあり、訴えのあった部位と一致する右大殿筋上部線維の筋電図測定をおこない、健常者と比較した。健常者では引き上げ相初期に波形は大きくなり次第に小さくなるが、本症例は引き上げ相初期以降も持続した波形が確認された。これは、引き上げ相で右股関節屈曲による体幹前傾、右股関節外旋による骨盤左回旋が生じるため、それらの制動として大殿筋上部線維が遠心性に作用し持続した波形が生じたと考えた。以上のことから右股関節内旋による骨盤右回旋が生じることで動作が改善し、殿部の怠さも改善すると考え、右股関節内旋可動域拡大を目的とした介入をおこなった。
【介入と結果】
治療は、右股関節内旋可動域練習を20分1回介入で実施した。治療後、階段昇段動作の安定性は向上し、努力的な動作、殿部の怠さも改善された。右体重受容相での右股関節内旋による骨盤右回旋は増加し、引き上げ相での右股関節外旋・骨盤左回旋は消失した。また、同時期の体幹右側屈、右足部外転も減少し、右股関節屈曲・外転、努力的な右膝関節伸展も軽減した。検査・測定において、関節可動域検査では右股関節内旋は-5°から10°と改善を認めていた。また、筋電図測定においても、大殿筋上部線維の筋活動は健常者と類似した波形となった。
【結論】
引き上げ相での右股関節外旋による骨盤左回旋は、右前上方への移動を代償するために骨盤左回旋位で股関節外転させる中殿筋後部線維の活動増加により生じていたと考えた。右股関節内旋可動域が改善したことで動作時に左半身が支持基底面から逸脱することがなくなり動作改善に至ったと考えた。大殿筋上部線維の筋活動について、本症例は階段昇段時に右股関節屈曲による体幹前傾と、引き上げ相での右股関節外旋による骨盤左回旋が生じていた。そのため、大殿筋上部線維の遠心性作用が大きくなった結果、持続的な筋活動が生じたと考えた。
【倫理的配慮、説明と同意】
今回の症例発表に際し、症例に対し十分な説明を行い、同意を得た。
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