第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[P-1] 脳損傷①(急性期)P-1

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:P-1 (webポスター会場)

座長:長谷 和哉(近畿大学病院)

[P-1-02] 運動麻痺増悪後,歩行の自立度及び実用性が低下した橋傍正中動脈領域BADの一症例

*山之内 琴音1、喜多 孝昭1、山田 賢一1、團野 祐輔1 (1. 守口生野記念病院)

【症例紹介】
 本症例は, 橋傍正中動脈(以下,PPA)領域のBranch atheromatous disease(以下,BAD)と診断された70歳代前半の男性である.発症日の21時頃から,呂律難・右下肢に違和感が出現し,起き上がり困難.起床後も症状が残存していたため,救急要請.上記診断にて保存的加療目的に当院入院となった.

【評価とリーズニング】
 1病日目,SIAS71点,FAC2,FIM93(運動58,認知35)点.2病日目,SIAS58点と運動麻痺の増悪を認め,ベッド上安静.5病日目から離床練習再開.
 9病日目,SIAS70点,Mini-BESTest2点,FAC2.歩行観察では,右立脚初期に右股関節の過度な内転に伴い骨盤の右側偏移により右側方への不安定性が生じていた.動作分析から筋緊張検査を行った結果,右内腹斜筋下部横行線維筋緊張低下,右中殿筋筋緊張低下を認めた.
 17病日目,SIAS 71点,Mini-BESTest11点,FAC3.歩行観察では,右立脚初期での右股関節の過度な内転は軽減されたが,右立脚中期から後期にかけて右下腿外旋位で距骨下関節の回内により下腿外側傾斜が過度に生じ,右足関節底屈により右下腿後傾,右膝関節伸展,右股関節屈曲に伴う体幹前傾,左傾斜を認め,左前方への不安定性が生じていた.動作分析から筋緊張検査を行った結果,右大腿筋膜張筋筋緊張亢進,右後脛骨筋筋緊張低下,右長・短腓骨筋筋緊張低下を認めた.
【介入と結果】
 1病日目に歩行練習を実施.2~4病日目はベッド上にて麻痺側上下肢の他動及び自動運動,ブリッジ運動,寝返り練習を実施.5病日目から歩行練習を含めた離床練習を再開.
 9~16病日目は,立位での体重移動練習,片脚立位,歩行練習を実施.
 17~37病日は,右大腿筋膜張筋ストレッチ,右足関節外返し自動運動,歩行練習を実施.
 37病日目,SIAS75点,Mini-BESTest23点,FAC4,FIM111(運動76,認知35)点.歩行観察では,右下腿外旋位での距骨下関節回内による過度な下腿外側傾斜と左前方への不安定性が軽減し,歩行の自立度及び実用性が向上し,回復期病院へ転院となった.
【結論】
 今回,運動麻痺が増悪したPPA領域BADの症例を担当した.BADは一般的に治療抵抗性に増悪し,転帰は不良となる場合が多いとされている.BADの中で最も多いレンズ核線条体動脈領域(以下,LSA)よりも,PPA領域の方が運動麻痺は軽症であるという報告があり,本症例においても比較的早期にSIASの向上を認めたが,歩行の自立度及び実用性の改善には時間を要した.今回,動作分析に基づき運動療法を行った結果,歩行の自立度及び実用性が向上したが,BADの症例報告においては,LSA領域に関する報告が多く,PPA領域に関する報告はまだ少ない.今後,PPA領域のBAD患者に対しても,理学療法の研究報告がさらに必要であると考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
 対象者には口頭にて説明し書面にて同意を得た.本発表は当院倫理委員会にて承認を得た.

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