第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[P-2] 脳損傷②(回復期)P-2

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:P-2 (webポスター会場)

座長:木下 篤(さくら会病院)

[P-2-04] プッシャー現象・半側空間無視を呈し座位保持獲得に難渋した一症例

*池田 拓弥1、安井 祐司1、酒井 雄太1、吉川 創1 (1. わかくさ竜間リハビリテーション病院 療法部 療法課)

【症例紹介】

80歳台男性、右総頚動脈の閉塞による右前頭葉~後頭葉にかけて広範囲の梗塞を認めた。病前のADLは全て自立であった。血栓回収療法を実施、術後47病日に当院回復期リハビリテーション病棟に入院。JCS:Ⅱ-10、左片麻痺、左半側空間無視(以下、USN)・高次脳機能障害を認め、ADLは全て全介助を要した。



【評価とリーズニング】

第100病日。JCS:Ⅰ-2、FIM:20、BI:5、認知・注意機能低下、左USN、感覚障害:左上下肢は体性感覚が重度鈍麻。左Brunnstrom Recovery Stage(以下、BRS):上肢Ⅰ-手指Ⅰ-下肢Ⅱ、粗大筋力テスト:体幹1、Trunk Control Test(以下、TCT) 0。 ROM-test(右/左):頸部回旋60°/45°、側屈0°/50°自動運動困難。視線は常時右側へ偏位しており、線分二等分試験では右側半分を指し示した。座位姿勢では、頭頚部が常に右回旋・軽度右側屈・頸椎前弯増強位、骨盤後傾位。SCP scale 2.5、右上肢にて座面を押し、体幹は左前方への傾きを認め、座位は中等度介助を要した。



【介入と結果】

非麻痺側に対し、座位・立位練習にて荷重感覚入力を実施した。体幹筋に対しては、端座位での上肢挙上、長下肢装具を用いた立位練習を行った。USNに対しては、視覚探索による左側への注意練習を行い麻痺側への注意の拡大を図った。

第130病日。JCS:Ⅰ-2、FIM:22、BI:5、線分二等分試験では中心部を指し示した。ROM-test(右/左):頸部回旋60°/45°、側屈0°/50°自動運動可能。左BRS:上肢Ⅱ-手指Ⅱ-下肢Ⅱ、粗大筋力テスト:体幹1、TCT 12。短時間の頭頸部~体幹にかけての正中位保持・左側方向への追視の出現。SCP scale 0.5。端座位は、右上肢のプッシング軽減を認め、軽介助で可能となった。



【結論】

Pusher現象を認める患者は、座位時の安定性限界が狭小化、圧中心は麻痺側に著しく偏移することで、姿勢の矯正に対しプッシングによる抵抗で圧中心を安定性限界に戻そうとするとされている。加えて、USNもPusher現象を助長させるといわれている。本症例は、右大脳半球の広範囲の損傷により、麻痺側の体性感覚入力、感覚モダリティの情報処理・統合過程に障害が生じ、身体垂直軸の歪みが生じていると考えた。そこで、体幹筋の賦活、視覚探索による麻痺側への注意の拡大、起居や座位での非麻痺側への感覚入力を行った。結果、体幹機能や・視覚的な歪みの改善により、支持基底面と圧中心、安定性限界の相互関係に好影響をもたらし、右上肢でのプッシングが軽減した。それにより、短時間の静的座位は可能となったが、体幹機能低下の残存・認知機能の低下により、姿勢の自己修正が困難であり、動的座位では安全性・安定性の低下を認めた。

 静的座位は座位の安定性向上により、リクライニング車椅子ではあったが、安楽な姿勢で定期的な離床が可能となり、離床機会の拡大に繋げることが出来たと考える。



【倫理的配慮、説明と同意】対象者に対し、研究の趣旨を口頭・書面で同意を得た。

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