第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[P-3] 脳損傷③(回復期)P-3

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:P-3 (webポスター会場)

座長:桑原 裕也(岸和田リハビリテーション病院)

[P-3-03] 歩行獲得に向けて取り組んだ一事例報告 予後予測と経過の観点から

*宮谷 悠1、藤田 良樹2 (1. 摂津医誠会病院、2. 森之宮病院)

【症例紹介】
70歳代女性。くも膜下出血発症及び開頭クリッピング術を施行し、水頭症に対して脳室ドレナージを留置した。術後MRIにて左被殻~放線冠に脳梗塞と診断され発症30日後、当院回復期病棟へ入院となり担当理学療法を開始した。
【評価とリーズニング】
入院時Functional Independence Measure(以下FIM)は35/126点(運動16/91、認知19/35)、麻痺側運動機能はFugl -Meyer assessment(以下FMA下肢)0/34点、バランス評価はBerg Balance Scale(以下BBS)5/56点、体幹機能評価はTrunk Impairment Scale(以下TIS)11/23点であり、感覚検査は表在及び深部感覚共に軽度鈍麻を認めた。認知機能としてMini-Mental State Examination(以下MMSE)は22/30点であった。起き上がりは中等度介助を要したが、寝返り及び座位保持は見守りで可能であった。立位場面では麻痺側膝折れを認め、手すりを用いた立位保持も困難であった。また易疲労性があり食事場面以外はベッド臥床の状態が続いていた。御本人及び御家族は自宅内歩行の獲得を希望していたが、先行研究に基づく予後予測の観点では、吉松ら(2018)は回復期病棟入院時のBBSが3ヶ月後の歩行自立への予測に有効でありカットオフ値は13/56点と述べている。また谷野ら(2014)は入院時FIM歩行項目が1点で完全麻痺を認める場合、退院時FIMの歩行項目は7割以上で4点以下となると報告しており、本症例は歩行自立が困難であると予測された。一方で、体幹機能はTISが11/23点であり、座位保持が可能であった点から、手すりなどを用いた歩行手段の獲得を目標に介入を進めた。
【介入と結果】
背臥位での殿部挙上運動や座位で骨盤の選択的な前後傾運動及び左右への重心移動、立ち上がり練習を実施した。発症60日後に手すりを用いた立ち上がり動作が見守りで可能となった。発症100日後に上肢支持なしでの立ち上がり動作が見守りで可能となり、FIMは83/126点(運動54/91、認知29/35)、FMA下肢は1/34点、BBSは20/56点、TISは14/23点となった。発症100日目以降の介入は立位練習頻度を増やし、後ろもたれ立位での麻痺側下肢支持練習、昇段動作練習、介助歩行練習を実施した。発症160日後に短下肢装具、肩スリングを用いたロフストランドクラッチ歩行が見守りで可能となり、FIMは96/126点(運動66/91、認知30/35)、FMA下肢は2/34点、BBSは28/56点、TISは17/23点となった。
【結論】
本症例は入院時評価から歩行自立困難と予測され、退院時にはロフストランドクラッチ歩行が見守りで可能となった。歩行の予後予測に向けて、麻痺側運動機能やバランス能力に加え、体幹機能を含めた包括的な評価の視点の重要性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本症例に対し、ヘルシンキ宣言に基づき、口頭および書面にて発表の趣旨を十分に説明し同意を得た。

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