[P-5-03] 回復期病棟の骨折患者に脊髄腫瘍が見つかるも再入院後受傷前ADLよりも向上した一例
【症例紹介】
80歳代女性。身長157.8cm、BMI22.9。約1年前より下肢の脱力感を自覚。自宅内を伝い歩き・四つ這いで辛うじて移動。その後悪性リンパ腫の診断にて18週間6クールの化学療法を開始。5クール目頃から下肢のしびれが出現し徐々に拡大。自宅療養中に転倒し右大腿骨頸部骨折受傷。前院にて骨接合術施行後X日当院転院。X+40日に歩行器歩行中等度介助まで回復も徐々に下肢筋出力低下し、それに伴いADL低下。X+53日脊髄腫瘍疑いにて前院転院。胸髄硬膜内髄膜外腫瘍にてY日(X+56日)に腫瘍摘出術施行。Y+21日に当院再入院。
【評価とリーズニング】
Y+24日、ASIA Impairment scale(以下AIS) D。Th7以下の対麻痺。膝関節伸展筋力0.15/0.08(kgf/kg)。左右ハムストリングスの痙性を認めModified Ashworth Scale (以下MAS)3。ROM(右/左)膝関節伸展-25°/-30°。表在感覚、深部感覚ともTh7以下重度鈍麻。ADLとしてはmFIM運動23点。起居動作最小介助。端座位保持物的支持にて自立。移乗動作全介助。立位保持は両手すり支持にて最大介助。移動車椅子自操自立。自宅退院にあたって起居移乗動作および歩行の自立が必須であった。
CT画像において腫瘍は脊髄の前方に位置しており、後索路、外側皮質脊髄路の圧迫は軽度と推察。手術では腫瘍の大部分が摘出可能であったため術後は神経路の再交通が期待できると考察。また、先行研究より腫瘍摘出術前AISがC~Eである患者の84%が歩行獲得可能との報告あり。さらに、本氏の経過より長期の低活動による廃用の疑いもあり。以上より本症例において積極的な歩行練習により歩行獲得が期待できると考え介入を開始。
【介入と結果】
入院早期のY+26日から起立練習や歩行練習を実施。廃用の改善、中枢神経刺激による神経活動の活性化を目的に介入。歩行練習は平行棒内歩行でのKAFO歩行から開始し、身体機能の向上に伴い装具非装着での歩行器歩行、4点杖歩行、T字杖歩行と歩行形態を変更。
Y+148日、膝関節伸展筋力0.35/0.23(kgf/kg)。痙性残存もMAS1。ROM(右/左)膝関節伸展-15/-15。Th7以下での表在感覚軽度鈍麻、異常感覚あり。深部感覚正常。ADLとしてはmFIM運動76点。起居移乗動作物的支持にて自立。床上動作物的支持にて自立。屋内移動は歩行器または杖歩行自立。屋外は電動車椅子またはバギー歩行自立。環境調整にて自宅退院し、当院外来リハビリテーションも歩行にて通院可能。
【結論】
約1年前からADL低下を認めており、それに伴う活動性低下、廃用を呈していた。腫瘍摘出術の施行および早期からの積極的な歩行練習にて受傷前以上の身体機能まで改善。これは腫瘍の摘出に加え受傷前からの活動性低下による廃用が積極的な運動療法にて改善したためと考察。自宅環境の調整やサービスの利用により再び自宅での独居生活、術前困難であった屋外歩行を獲得できた。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき説明を行い、同意を得た。
80歳代女性。身長157.8cm、BMI22.9。約1年前より下肢の脱力感を自覚。自宅内を伝い歩き・四つ這いで辛うじて移動。その後悪性リンパ腫の診断にて18週間6クールの化学療法を開始。5クール目頃から下肢のしびれが出現し徐々に拡大。自宅療養中に転倒し右大腿骨頸部骨折受傷。前院にて骨接合術施行後X日当院転院。X+40日に歩行器歩行中等度介助まで回復も徐々に下肢筋出力低下し、それに伴いADL低下。X+53日脊髄腫瘍疑いにて前院転院。胸髄硬膜内髄膜外腫瘍にてY日(X+56日)に腫瘍摘出術施行。Y+21日に当院再入院。
【評価とリーズニング】
Y+24日、ASIA Impairment scale(以下AIS) D。Th7以下の対麻痺。膝関節伸展筋力0.15/0.08(kgf/kg)。左右ハムストリングスの痙性を認めModified Ashworth Scale (以下MAS)3。ROM(右/左)膝関節伸展-25°/-30°。表在感覚、深部感覚ともTh7以下重度鈍麻。ADLとしてはmFIM運動23点。起居動作最小介助。端座位保持物的支持にて自立。移乗動作全介助。立位保持は両手すり支持にて最大介助。移動車椅子自操自立。自宅退院にあたって起居移乗動作および歩行の自立が必須であった。
CT画像において腫瘍は脊髄の前方に位置しており、後索路、外側皮質脊髄路の圧迫は軽度と推察。手術では腫瘍の大部分が摘出可能であったため術後は神経路の再交通が期待できると考察。また、先行研究より腫瘍摘出術前AISがC~Eである患者の84%が歩行獲得可能との報告あり。さらに、本氏の経過より長期の低活動による廃用の疑いもあり。以上より本症例において積極的な歩行練習により歩行獲得が期待できると考え介入を開始。
【介入と結果】
入院早期のY+26日から起立練習や歩行練習を実施。廃用の改善、中枢神経刺激による神経活動の活性化を目的に介入。歩行練習は平行棒内歩行でのKAFO歩行から開始し、身体機能の向上に伴い装具非装着での歩行器歩行、4点杖歩行、T字杖歩行と歩行形態を変更。
Y+148日、膝関節伸展筋力0.35/0.23(kgf/kg)。痙性残存もMAS1。ROM(右/左)膝関節伸展-15/-15。Th7以下での表在感覚軽度鈍麻、異常感覚あり。深部感覚正常。ADLとしてはmFIM運動76点。起居移乗動作物的支持にて自立。床上動作物的支持にて自立。屋内移動は歩行器または杖歩行自立。屋外は電動車椅子またはバギー歩行自立。環境調整にて自宅退院し、当院外来リハビリテーションも歩行にて通院可能。
【結論】
約1年前からADL低下を認めており、それに伴う活動性低下、廃用を呈していた。腫瘍摘出術の施行および早期からの積極的な歩行練習にて受傷前以上の身体機能まで改善。これは腫瘍の摘出に加え受傷前からの活動性低下による廃用が積極的な運動療法にて改善したためと考察。自宅環境の調整やサービスの利用により再び自宅での独居生活、術前困難であった屋外歩行を獲得できた。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき説明を行い、同意を得た。
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