第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[PR-16] 査読者推薦演題①(症例報告)PR-16

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:PR-16 (webポスター会場)

座長:岡原 聡(大阪急性期・総合医療センター)

[PR-16-03] 意思決定共有をふまえて免荷式トレッドミル歩行を実施した頸髄症性脊髄症術後の1症例

*横山 広樹1、玉置 昌孝1 (1. 関西医科大学くずは病院)

【症例紹介】
症例は60歳代男性。術前より歩行機能の低下が生じ、次第に日常生活に支障をきたし、手術目的で当院に入院となった。第2病日に頸椎症性脊髄症に対して椎弓形成術が施行となる。第20病日に回復期リハビリテーション病棟に転棟となった。発症前ADLは全て自立しており、会社勤務していた。

【評価とリーズニング】
第20病日、American Spinal Injury Association Lower extremity motor score(以下、ASIA LEMS)は29点、 Modified Ashworth Scale(以下、MAS)は足関節底屈筋が右0、左1、表在・深部感覚ともに軽度鈍麻であった。Walking Index for Spinal Cord Injury II(以下、WISCI II)は6点であり、歩行器・短下肢装具・身体的介助を要していた。
第72病日、ASIA LEMSは36点、MASは足関節底屈筋が右1、左1、WISCI IIは19点となり、杖歩行にて10mは0.76m /sとなった。そして、歩行以外のADL動作の自立度も向上したため、今後の理学療法の方向性をAid for Decision-making in Occupation Choice(以下、ADOC)を用いて検討した。結果、主に屋外移動に関する課題が抽出され、屋外歩行速度の指標は1m/sであることも踏まえ、歩行速度の向上を目標とした。しかし、頸椎症性脊髄症の歩行に関するエビデンスは少なく、介入手段に関して不確実性があった。また本症例は今後の理学療法プログラムに対して協働して選択することに理解を示していたことから、Shared dicision making(以下、SDM)による意思決定の共有を行い、理学療法プログラムを検討した。その中で脊髄疾患に用いられている免荷式トレッドミル歩行および通常の歩行練習を選択肢として提示し、前者を実施していく運びとなった。

【介入と結果】
体幹・下肢筋力強化練習、階段昇降練習に加えて、免荷式トレッドミル歩行を合計20―30分/日を3週間実施した。免荷量は先行研究を参考に体重の20―30%から開始し徐々に減少させた。結果、第95病日にはASIA LEMSは47点、WISCI IIは20点、MASは足関節底屈筋が右1、左1、10m歩行は1.11m /sとなった。屋外歩行に関する自己効力感も向上を認めた。第111病日、自宅退院となり、日常生活では家事や買い物の移動も可能となった。

【結論】
今回免荷式トレッドミル歩行を用いた介入がASIA LEMSの改善ならびに歩行速度の改善に寄与した可能性がある。また自己効力感は活動や参加への影響が示唆されており、歩行機能の改善やSDMによる意思決定手段を用いたことで、自己効力感が向上し、退院後の活動に好影響を与えたと考える。

【倫理的配慮、説明と同意】
今回の発表の際し、ヘルシンキ宣言に基づき本症例に説明し同意を得た。

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