第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[PR-17] 査読者推薦演題②(症例報告)PR-17

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:PR-17 (webポスター会場)

座長:鯨津 吾一(大阪府済生会茨木病院)

[PR-17-01] 在宅終末期がん患者の自宅トイレでの排泄動作維持を目指した症例

*山口 里奈1、塚川 亮祐1、奥野 大輔1、小林 心也1、西川 明子2 (1. 株式会社フルーション リハビリ本舗事業部、2. 株式会社フルーション 法人本部)

【症例紹介】
 81歳女性。夫とふたり暮らし。X年Y月胃癌stage4の診断。Y+1ヶ月後に幽門部胃切除術を施行後、化学療法開始されたが再発。Y+3ヶ月後在宅緩和ケア目的にて訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)開始。家事全般が本症例の自宅での役割であり、「最期まで自宅のトイレへ行きたい」という思いを強く持っていた。今回、本症例のDemandsを尊重し、自宅トイレでの排泄動作が維持できた一例」ついて報告する。

【評価とリーズニング】
 訪問リハ開始時、立位保持時間は10分程度可能で易疲労感を伴うが、家事動作や身の回り動作は自立。Eastern Cooperative Oncology Group(以下、ECOG)はgrade1、Karnofsy Performance Scale(以下、KPS)は80%であった。訪問リハ開始から3ヶ月後、ECOGはgrade3、KPSは50%で、臥床時間が増えていたが、座位での調理など家事動作の一部が可能であった。訪問リハ開始から5ヶ月後には、ECOGはgrade4、KPSは40%で、日中の臥床時間はさらに延長し、家事動作は困難となっていたが、夫への調理方法の説明など、可能な限り家事に参加できていた。また、疼痛増強や安静時にて呼吸困難感を認めたため、在宅酸素導入となり、移動や排泄動作に介助が必要であった。体力低下が進行する中、最期まで、「自宅トイレでの排泄動作」を維持するために、疲労感や呼吸苦などの症状が増大しないような動作指導や動作の優先順位を明確にして介入が必要であると考えた。

【介入と結果】
 訪問リハ開始時、トイレ・家事動作能力の維持を目的とした基本動作練習、座位での洗濯干しなどの動作指導を実施した。約3ヶ月後、左上下肢痛、胸背部痛が出現し、家事動作においても易疲労感が増大したため、夫と家事の分担、座位での家事動作、前屈みでの動作など呼吸苦や疼痛を誘発させる動作を控えることを指導した。病状悪化に合わせてタッチング、側臥位でのポジショニングで症状緩和を図り、意欲を保つために傾聴による精神面でのフォローを行ったことで、永眠の2日前まで夫の介助にて自宅トイレでの排泄動作が維持できた。本症例のdemandsであった「自宅トイレでの排泄」を優先的なADL動作として明確にし、症状緩和、夫の介護によりエネルギー消費を抑制することで排泄動作が維持できたと考える。

【結論】
 終末期は運動耐容能改善へのアプローチは困難なことが多く、動作に同調した呼吸法の指導やコンディションの調整、呼吸苦やエネルギー消費などの負担軽減や環境調整・動作法の提案を行い本人の優先的に実施したいADL動作へ介入することが望ましいとされている。本症例のdemandsを優先的に考え、夫の介護によるエネルギー消費の抑制や、呼吸苦などの症状緩和により、自宅トイレでの排泄動作維持に繋がったと考える。

【倫理的配慮、説明と同意】
 本報告はヘルシンキ宣言に則り、当社倫理委員会の承認を得たものであり(承認番号:2021001番)、症例報告の趣旨を夫に文書にて説明を行い書面で承諾を得た。

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