第33回大阪府理学療法学術大会

講演情報

Webポスター

[PR-17] 査読者推薦演題②(症例報告)PR-17

2021年7月11日(日) 08:45 〜 15:30 Web Poster:PR-17 (webポスター会場)

座長:鯨津 吾一(大阪府済生会茨木病院)

[PR-17-03] 早期訪問リハビリテーション介入により、在宅生活継続が可能となった非結核性抗酸菌症の1例

*中上 和洋1、豊浦 尊真1、吉本 咲希1、本田 憲胤1、大洞 佳代子1 (1. 公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院)

【症例紹介】
X‐1年より間質性肺炎(以下IP)、肺非結核性抗酸菌症(以下NTM)の診断を受け抗生剤加療中の79歳男性。ADL自立レベルで1.4㎞先への買い物など屋外活動は可能であったが、NTMとIPの進行により呼吸困難感の増強を認めX‐5ヶ月より入院加療を勧められていた。しかし同時期に妻の病状悪化もあり外来通院での治療を継続。妻と死別後は独居生活であったが、X-1ヶ月に労作時呼吸困難感が増強し在宅生活困難となり当院受診。NTM・IPの増悪、るいそう・フレイルの進行と診断され薬剤と栄養調整、リハビリテーション目的で入院となった。呼吸困難感の訴えや不安表出が多く社会サービス調整目的に転院を考慮されたが、本人の希望により当院訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)導入にてX日自宅退院となった。

【評価・リーズニング】
〈入院時〉身体所見:身長168.2㎝、体重49.5㎏。胸部CT画像所見:両肺野に網状影、右上下葉に気管支拡張、末梢に空洞陰影。肺機能検査:VC2.03L(%予測値57.5%)、FVC2.01L(%予測値58.8%)、FEV1%(G)93.5%。〈退院時〉血液検査所見:Alb3.9g/dl、CRP0.88㎎/dl、 KL-6 526.7U/ml。〈訪問開始時(X+5日)〉理学療法所見:体重48.5㎏(入院時より減少率2%)。安静時SpO₂96%、呼吸数28回/分。呼吸補助筋動員による努力性呼吸あり。買い物時連続歩行距離は50m程度。段差動作(1段×10回)時呼吸困難感あり(修正Borg指数:呼吸4・下肢疲労5)。食事:800kcal+イノラス配合経腸用液300kcal/日(入院時1800kcal/日)。
呼吸困難感の最も大きな要因として、拘束性換気障害による換気機能低下に加え、エネルギーインバランスや活動量減少による末梢骨格筋量低下がさらなる呼吸補助筋過活動を増長させ呼吸筋疲労が生じていると考えられた。

【介入と結果】
〈介入〉期間:4ヶ月。時間:40分/日。頻度:退院後2週間3回/週(医療保険)。その後介入頻度漸減。介護保険認定後1回/週。内容:栄養指導(脂質摂取指導)、呼吸補助筋リラクゼーション、下肢筋力訓練、筋持久力訓練、基本動作訓練を実施。介入期間中、胸部レントゲン画像や血液検査上増悪なく経過。
〈結果〉理学療法所見:終了時体重は49.1㎏(入院時より減少率0.8%)。安静時SpO296%、呼吸数28回/分。呼吸補助筋軽減傾向。買い物時連続歩行距離は100m可能。階段動作時(13段×2回)呼吸困難感軽減傾向(修正Borg指数:呼吸6・下肢疲労5)。食事:1000kcal+イノラス配合経腸液300kcal/日まで改善。

【結論】
 呼吸器疾患は体重減少しやすく、やせ型は呼吸困難感増強の要因となる。本症例は入院中に体重減少みられたが、退院後も栄養指導と運動療法を継続することで体重減少と呼吸困難感の増強を防いだ。それにより活動量が増加し在宅生活の継続が可能であった。

【倫理的配慮、説明と同意】
発表にあたり、患者個人情報とプライバシーの保護に配慮し、本人に同意を得た。

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