第17回日本薬局学会学術総会

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シンポジウム

シンポジウム2
「精神科疾患の外来治療 薬局での服薬支援~薬剤師にできること」

Sun. Oct 8, 2023 1:00 PM - 2:30 PM 第2会場 (3号館3階 国際会議室)

座長:和田 智仁(社会医療法人居仁会 総合心療センターひなが 診療技術部薬剤課 リーダー)

[SY2-2] 精神科外来における統合失調症患者への支援

亀井 浩行 (名城大学薬学部 病院薬学研究室 教授)

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 2004年に厚生労働省が精神疾患患者の長期入院解消のために打ち出した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」では、「入院医療中心から地域生活中心の医療へ」の方針が示されたが、未だ困難な状況にある。この原因の一つとして、地域における精神医療や福祉活動において重大な障害となる精神疾患患者に対するスティグマ(偏見・差別)が挙げられる。特に長期入院患者の過半数を占める統合失調症患者へのスティグマは、諸外国と比較して高いことが指摘されている。さらに、一般市民だけでなく、統合失調症患者と身近に接している薬剤師の患者に対するスティグマも根強い。慢性精神疾患である統合失調症の薬物療法においては、薬の効果や副作用の確認、服薬継続の支援、患者のQOLの向上など、薬剤師が責任をもって服薬支援を行う必要がある。そのため、統合失調症患者に対する薬剤師のスティグマを是正することが不可欠であり、これにより両者の間に信頼関係の形成が容易となり、質の高い服薬支援を患者に提供できる。また、入院患者の多くを占める統合失調症患者の薬物療法を行う上で重要な問題点として、服薬アドヒアランスの不良が挙げられる。服薬アドヒアランスを低下させる要因として、患者の疾患に対する理解度、患者と治療者との関係性及び抗精神病薬による副作用が考えられる。これらの中で、抗精神病薬の副作用は、多剤大量併用投与に起因することが多く、その是正に向けた取り組みが必要である。このポリファーマシーの是正には、エビデンスに基づいた減薬・減量ガイドラインが不可欠であり、「抗精神病薬の多剤大量投与の安全で効果的な是正に関する臨床研究」より、SCAP(safety correction of high-dose antipsychotic polypharmacy)法による減量プロトコールが提唱されている。このSCAP法を用いた減薬・減量を実践する場合、減薬に伴う精神症状の悪化や離脱症状の発現などに不安を訴える患者やその家族に対して、それらの対処の仕方や減薬のスケジュールなどの十分な説明を継続的に行うことが重要となる。統合失調症治療の最終目標は患者の社会復帰にある。そのためには治療者が患者背景や患者の意思をしっかりと汲み取り、個々の患者にあった治療法を選択していく、SDMを積極的に取り入れ、患者が納得する治療選択を行っていく必要がある。
 本シンポジウムでは、統合失調症における薬剤師の支援とその取り組みについて紹介する。