第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[1P-2] ポスター1(1P-49ー1P-87)

2021年6月16日(水) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[1P-76] 可溶化ミオグロビンタグを利用した小型化抗体の微生物合成

酒井 彩花1, 薄井 裕次郎1, 牧野 祥嗣2, 磯貝 泰弘1 (1.富山県立大・工・医薬, 2.富山県立大・工・生物工)

これまでバイオ医薬品に使用されている抗体の多くは全長抗体で、分子量が約15万と巨大である。そのため、合成や品質管理が難しく、生産コストが高額になるが問題となっている。本研究では、ヒトEGFRに対する全長抗体であるセツキシマブとヒトHER2に対する全長抗体であるトラスツズマブを小型化し、潜水哺乳類のミオグロビン(Mb)を融合タンパク質タグとして使用した効率的な抗体タンパク質の微生物合成を試みた。まず計算機を利用して、それぞれの抗体の抗原結合フラグメント(Fab)の立体構造から、重鎖の定常領域であるCH1と軽鎖の定常領域であるCLを除去し、残りの抗体認識部位 (VL鎖とVH鎖) を切り出した。次に、切り出したVL鎖のN末とVH鎖のC末の間に、人工的なリンカー配列を挿入した。このようにして設計した小型化一本鎖抗体(scFv)の立体構造からアミノ酸配列を読み取り、これらの配列をコードする人工遺伝子DNAを合成し、大腸菌に最適化されたMb-scFvの発現系を作成した。この発現系を利用して蛋白質を合成し、各抗原に対する結合活性を測定した。その結果、本研究で設計した小型化抗体タンパク質は、融合Mbタグの利用によって効率良く微生物合成出来ることがわかった。特に、トラスツズマブ-scFvは、融合Mbタグを結合することで、可溶性画分に多量に発現した。また、どちらのscFvも融合Mbタグを結合した状態で、それぞれの抗原であるヒトEGFRとヒトHER2タンパク質に対して、全長抗体と同等な結合活性を示した。