日本放射化学会第66回討論会(2022)

実行委員長挨拶

日本放射化学会第66回討論会(2022)開催にあたって


日本放射化学会第66回討論会(2022)

実行委員長 高橋 嘉夫

東京大学大学院理学系研究科教授
東京大学アイソトープ総合センター長


  日本放射化学会第66回討論会(2022)を、2022年9月15日(木)から17日(土)の3日間の日程で、東京大学本郷キャンパスの理学部1号館を主会場として対面形式で開催させて頂きます(*9月6日追記: コロナ感染・濃厚接触の方はオンライン講演可能; 聴講でのオンライン参加歓迎)。66回を数える歴史ある本討論会を東京大学理学部で開催させて頂くこと、我々にとりましても大変光栄なことです。過去の諸先輩方の本討論会に対する熱い想いを引継ぎ、活気のある討論会にしたいと考えております。また対面ということで、本討論会開催に当たっては、十分な感染対策を行う予定であり、ご参加の皆様にも感染予防にご協力頂きたいと思います。一方で、コロナの再拡大が起きた場合には、オンラインでの開催に切り替える準備も進めておりますので、その場合にも本討論会に是非ご参加頂けますよう、よろしくお願い致します。
 
  さて、本放射化学討論会は、わが国の核・放射化学研究者の研究発表と交流の場であり、第1回会合は斎藤信房先生(東大)が世話人となり、“死の灰”分析で知られるビキニ事件から間もない1957年に東京で開催されました。その後毎年1回開催され、本年9月の討論会が第66回目にあたります。この歴史ある放射化学討論会は、研究者の自主組織「放射化学研究連絡委員会」によって長らく運営され、1999年10月の日本放射化学会の設立からは日本放射化学会年会・放射化学討論会という二つの名称を冠した大会となっていましたが、日本放射化学会が主催する討論会という位置づけを明確にするため、本会創設20年を機に2019年から標記のような名称となりました。本討論会は、核・放射化学を中心として、今では福島原発問題を含む環境放射能、物性科学、保健物理、放射線生物学、核医学、加速器科学、放射線教育等の多岐にわたる分野の研究者が集う学際的な研究交流の場となっております。
 
  さて、アンリ・ベクレルの放射能の発見から126年が経ち、今、放射能・放射線を用いた科学は、ニホニウムの発見や様々な形でのSDGsへの貢献に加え、α線放出核種を用いた核医学の目覚ましい発展というイノベーションに湧きたっています。放射線・放射能といえば、発見当初から様々な基礎科学のブレークスルーや新エネルギー源を生んだ一方で、近年ではその危険性からネガティブな印象がついて回るようになってしまいました。しかし、放射化学は、文系理系の幅広い学問分野に貢献する学際的かつ分野横断的な研究領域であり、その科学技術の基礎としての重要性は、今後も何ら変わることはありません。このような放射化学の基礎と応用を幅広く扱う放射化学討論会の役割は、今後とも益々大きなものとなるでしょう。本討論会が、このような分野の活発な議論の場となると共に、関連分野の若手研究者に夢を与える場となることを強く願っております。
 
  このような目標を達成するために、今回の討論会では、新しくセッション制を取り入れました。これまで放射化学討論会が扱ってきた各分野をセッションとしてあらかじめ明示し、そのコンビーナーを各分野の先生方(学会で新しく創設した各部会にも依頼)にお願いし、それぞれのセッションで招待講演者をお呼び頂くことで、新しい出会い、研究テーマの新展開、若手の奨励などを図れればと期待しております。また、今まさに注目を集める核医学、核プローブのリュウグウへの応用、アクチノイド化学などについては基調講演をお願いし、魅力的なプログラムとなるよう鋭意努力致しておりますので、会員・非会員問わず、是非多くの方にご参加頂けますよう、よろしくお願い致します。もちろんこれらの研究の基盤となる核化学、環境放射能、放射化分析、原子核プローブ、医薬・生物学におけるRI利用、核鑑識、放射線教育や、宇宙・地球化学や考古学・文化財・人類学への応用などでも多くの研究発表を予定しています。
 
  冒頭にも述べましたが、本討論会は1957年12月に第1回が東京(学士会館)で開催され、東京での(対面)開催は11回目を数えますが、東大理学部1号館が主会場となって開催されるのは今回が初めてのようです。東大理学部1号館には、本理学系研究科出身のノーベル賞受賞者(小柴昌俊先生、梶田隆章先生、昨年受賞の真鍋淑郎先生)に関わる展示などがあるサイエンスギャラリーを整備中で、討論会までには完成の予定です。特に若い学生の皆さんには、本会とも関連のある分野の先生方の業績なども身近に感じて頂き、「俺も、私も」という意義込みを新たにして頂ければと思っておりますし、これも対面ならではの機会と思っております。
 
  コロナの流行が今後どうなるか予断は許しませんが、今は9月に本郷で皆様をお迎えすることができますことを心より祈念しております。