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[S03P-10] 北海道北部における衝突帯位置と収束速度の推定
東アジア,特に日本列島周辺のテクトニクスはプレート運動の相互作用を受け複雑である.日本海東縁部で発生する地震はいくつかのプレートの相互作用によると考えられているが,北海道北部の西方沖,1940年積丹沖地震(M7.0)と1971年サハリン南西沖地震(M7.1)の間には地震空白域が存在する.また,陸域にあたる北海道北部の日本海側にはサロベツ断層帯が位置し,地震調査研究推進本部による長期評価においてM7.6程度の地震が発生する可能性が指摘されている.プレート境界モデルは多くの研究で提案されており,サハリン南部から北海道北部にかけての陸上にプレート境界が存在する可能性も示されている.さらに,震源分布や地質構造から,北海道は東西で異なる構造を持つこと明らかになっている.この境界の有無を検証し,測地学,地震学,地質学の異なる側面からの見解を考慮した包括的な議論をするため,本研究ではOkada(1992)の解析解を用いて衝突帯にディスロケーションモデルを適応し,GNSS観測による速度データ(国土地理院GEONET)から境界の位置,走向,収束速度,弾性層厚さを同時推定した.最適解の決定にはグリッドサーチを使用し,残差が最小になるパラメータの組み合わせを最終的な解とした.本研究では断層傾斜の推定や,GNSS速度から算出した歪み速度を用いた解析も行った.無限に長く,鉛直な断層を仮定した場合に推定された境界位置は,東北東―南南西方向で概ね震源分布,地質構造の境界と一致した.推定弾性層厚さは21.6 kmであり,地震発生下限の深さを示すD90は北海道北部で20-30 km,モホ面の深さはおよそ30 kmである.このモデルにおける厚さの推定精度はほかのパラメータに比べると低いが,地震学的な不連続面の深さと同程度の値であることから,境界位置や速度の推定精度を保証していると考えられる.推定された収束速度は16.5 mm/yrであり,この値は測地学的データを用いたプレート間相対速度を推定したいくつかの先行研究と一致する.本研究では測地学,地震学,地質学データ,3つの独立したデータにより推定された境界位置が概ね一致することから,この地域に何らかの境界が存在する可能性を支持する結果となった.