17:00 〜 18:30
[S06P-17] 深発地震波形を用いた広帯域レシーバ関数解析による西南日本下のフィリピン海プレート境界の地震学的構造推定
西南日本ではフィリピン海プレートの沈み込みに伴い, プレート境界型巨大地震が約百数十年という間隔で発生してきた. また, これらの地震発生領域(深さ約10-20 km)の浅部や深部延長において, 多様なスロー地震現象が確認されている [例えば Obara and Kato (2016, Science)]. プレート境界型地震の発生にはスロー地震が寄与する可能性 [例えば Ito et al. (2017, GRL)] が様々指摘されており, プレート境界の地震学的構造解析からプレート境界地震やスロー地震の発生メカニズムを探るという試みが行われてきた [例えば Kato et al. (2010, GRL)]. その中でもレシーバ関数法は, プレート境界や海洋モホ面, 大陸モホ面などといった重要な速度境界の構造を抽出する方法 [例えば Shiomi et al. (2008, JGR); Ueno et al. (2008, BSSA)] として広く使われてきた. 従来のレシーバ関数解析では低周波数帯を用いるのが一般的であったが(例えば Shiomi et al. (2008) では0.6 Hzまで), 最近では,より高周波数成分を含むレシーバ関数解析によって, 浅部プレート境界面近傍の低速度薄層の存在が示唆されている [例えば Akuhara et al. (2017, JGR) では 4 Hzまで使用]. 著者らは, レシーバ関数に適用する周波数帯域の高周波側を複数設定して比較する「広帯域レシーバ関数法」と開発し, 浅部プレート境界の詳細構造を議論した [Sawaki et al. (2019, JpGU Meeting)]. しかし, 通常レシーバ関数解析では遠地地震(震央距離約30 ~ 90°)を使用するため, 高周波数帯の内部及び散乱減衰により高々 3 Hzまでの周波数帯域までしか使えない場合が多い [Sawaki et al. (2019, JpGU Meeting)]. そこで本研究では, 西南日本の周辺で起こった太平洋スラブ起源の深発地震からの観測波形を使用して, プレート境界近傍をターゲットにした広帯域レシーバ関数解析を行う. 近地の深発地震であることから, 幾何減衰,内部・散乱減衰の影響が小さく, 遠地波形に比べてS/N比が高いことが期待される. 本研究では, 広帯域レシーバ関数解析の周波数上限を上げ, 更に微細な構造を取得することを目的とする.
地震波形は, 東海・近畿・四国地方に設置されている防災科学技術研究所Hi-net, F-netの地震観測点で取得されたものを使用した. 深発地震は, 観測点からの震央距離が0 ~ 30°の範囲に入り, かつM5以上で, 観測期間は2005年1月から2018年12月までのものを取得した. なお, 震央距離が約 10°< Δ < 25°の場合(震源深さに依存), マントル遷移層トリプリケーションによってスローネスの異なる複数のP波が到達してしまうことから, これらは解析から除外した. レシーバ関数の計算には, 時間拡張マルチテーパ法 [Helffrich (2006, BSSA); Shibutani et al. (2008, BSSA)]のコードを使用し, ハイカット周波数を0.4 ~ 10 Hzの中から複数設定することで, 異なる周波数帯域のレシーバ関数を計算した. また, 得られたレシーバ関数にHarmonic Decomposition Analysis [Bianchi et al. (2010, JGR)] を適用し, 波線到来方向依存性やTransverse成分の評価を行った.
まずは, 遠地地震記録と近地深発地震記録のパワースペクトルの比較を行った(図1). 使用可能な周波数帯域について求めたところ, 遠地地震記録のスペクトルは周波数が3 HzほどまでS/Nが高い [Sawaki et al. (2019, JpGU Meeting)] のに対し, 近地深発地震波形のスペクトルはS/Nが10 Hz近傍まで十分に高いことが分かった. また日本近傍で発生する深発地震の分布は, その多くが西南日本から見て北東~南東に分布している. 西南日本で取得できる遠地地震波形の多くは南南東から西, または北の方角に分布していたことから, 本研究によりこれまでのレシーバ関数解析では得られなかった波線到来方向の, より高周波の地震学的構造を取得することに成功した. 本発表では深発地震のみを用いた広帯域レシーバ関数解析結果と, これまでの遠地地震レシーバ関数を組み合わせた解析結果を示し, 詳細構造について議論する.
地震波形は, 東海・近畿・四国地方に設置されている防災科学技術研究所Hi-net, F-netの地震観測点で取得されたものを使用した. 深発地震は, 観測点からの震央距離が0 ~ 30°の範囲に入り, かつM5以上で, 観測期間は2005年1月から2018年12月までのものを取得した. なお, 震央距離が約 10°< Δ < 25°の場合(震源深さに依存), マントル遷移層トリプリケーションによってスローネスの異なる複数のP波が到達してしまうことから, これらは解析から除外した. レシーバ関数の計算には, 時間拡張マルチテーパ法 [Helffrich (2006, BSSA); Shibutani et al. (2008, BSSA)]のコードを使用し, ハイカット周波数を0.4 ~ 10 Hzの中から複数設定することで, 異なる周波数帯域のレシーバ関数を計算した. また, 得られたレシーバ関数にHarmonic Decomposition Analysis [Bianchi et al. (2010, JGR)] を適用し, 波線到来方向依存性やTransverse成分の評価を行った.
まずは, 遠地地震記録と近地深発地震記録のパワースペクトルの比較を行った(図1). 使用可能な周波数帯域について求めたところ, 遠地地震記録のスペクトルは周波数が3 HzほどまでS/Nが高い [Sawaki et al. (2019, JpGU Meeting)] のに対し, 近地深発地震波形のスペクトルはS/Nが10 Hz近傍まで十分に高いことが分かった. また日本近傍で発生する深発地震の分布は, その多くが西南日本から見て北東~南東に分布している. 西南日本で取得できる遠地地震波形の多くは南南東から西, または北の方角に分布していたことから, 本研究によりこれまでのレシーバ関数解析では得られなかった波線到来方向の, より高周波の地震学的構造を取得することに成功した. 本発表では深発地震のみを用いた広帯域レシーバ関数解析結果と, これまでの遠地地震レシーバ関数を組み合わせた解析結果を示し, 詳細構造について議論する.