日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

S08P

2019年9月18日(水) 13:00 〜 14:30 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

13:00 〜 14:30

[S08P-14] 室内水圧破砕実験時に生じるAcoustic Emissionの絶対規模とコーナー周波数の推定

*今北 啓一1、直井 誠1、Chen Youquing1、山本 和畝1、森重 有矢1、堤 直史1、川方 裕則2、石田 毅1、田中 浩之3、有馬 雄太郎3、北村 重浩3、兵藤 大祐3 (1. 京都大学、2. 立命館大学、3. JOGMEC)

1.研究背景
 シェールガス・オイルの開発では,貯留層の透水性の向上のために水圧破砕技術が用いられている.水圧破砕によって亀裂が造成される際には微小地震が生じるので,地表でどの程度の震動が生じるかを適切に評価することが重要である.この強震動評価においては,コーナー周波数や応力降下量などの震源パラメタが重要である(e.g., Atkinson, 2015).そこで本研究では,室内水圧破砕実験中に生じる微小弾性波動(Acoustic Emission,以下AE)を計測し,AEの絶対規模及びコーナー周波数を推定することで,水圧破砕で誘発される地震性イベントの震源パラメタが,通常の地震とどのような関係にあるかを評価した.

2.室内水圧破砕実験とAEモニタリング
 実験には,シェールガス・オイル開発が行われている米国テキサス州のイーグルフォード層の露頭サンプル(以下,イーグルフォード頁岩)を65x65x130 mmの直方体に成形した供試体を用いた.水圧破砕時に生じるAEを,高感度・広帯域型の富士セラミックス製M304Aセンサ16個と200–750 kHzに感度を持つPhysical Acoustic Corporation製Pico センサ8個,計24個のAEセンサで計測し,P波走時から個々のイベントの震源を推定した.その後,推定された震源を初期震源として,Double Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を適用し,AE震源の再決定を行った.

3.AEセンサの周波数特性,および地震モーメントMoの推定
 AEセンサの絶対感度及び周波数特性を測定するため,ステンレス製の供試体を用意し,ある面に発振子を取り付けてパルス波を発振し,対面における振動をレーザードップラー速度計(電子技研工業株式会社製,Melectro Laser Vibrometer V100;以下LDV)で測定する試験を実施した.その後,同じ信号をAEセンサでも記録し,これをLDVの記録でdeconvolutionしてAEセンサの周波数特性を求めた.AEセンサの感度・周波数特性は供試体とのカップリング状況に依存すると考えられるので,受振側のAEセンサは12回貼り直して試験を繰り返し,得られた結果を平均化することで,AEセンサの特性を評価した.発振側のAEセンサは試験中一度も取り外さず,カップリングの影響は一定と仮定して解析を行った.
上記の手法で得られた周波数特性を用い,水圧破砕試験中に得られたAEスペクトルを補正することで個々のAEの地動変位スペクトルを推定した.これらに対してAEの理論変位スペクトルを最小二乗法でフィッティングすることで,個々のAEの地震モーメントMO及びモーメントマグニチュードMWを求めた.

4.コーナー周波数推定
 次に,近接して発生したイベントペアのP波スペクトル比を用いてコーナー周波数fcの推定を行った(例えばIde et al. 2003).解析は,M304Aセンサで得られた記録のみを使用し,震源間距離が3 mm以下,相互相関係数が0.8以上,観測点数が6点以上の条件を満たすイベントペアに対して実施した.一般に,自然地震において推定される応力降下量は地震の規模によらず,およそ0.1-100 MPaの間に分布することが繰り返し確認されている(e.g., Yoshimitsu et al., 2014).本研究で得られたAEは,通常の地震とは異なりほぼ全てが引張型イベントであることがモーメントテンソル解析から確かめられているが(今北 2018),得られたコーナー周波数と地震モーメントの関係は,従来報告されている自然地震に対するスケーリング則と概ね調和的であることがわかった(図).

5.まとめ
 室内水圧破砕実験中に生じるAEを測定し,絶対規模及びコーナー周波数を推定した.本研究で得られたAEは引張型イベントが卓越することがわかっているが,コーナー周波数と地震モーメントの関係は,従来繰り返し報告されている自然地震に対するスケーリング則と概ね調和的であることがわかった.