日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

一般セッション » S12. 岩石実験・地殻応力

S12P

2019年9月18日(水) 13:00 〜 14:30 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

13:00 〜 14:30

[S12P-04] 断層に含まれる高熟成炭質物の熱熟成反応の速度論的影響の実験的解明

*山下 修平1、廣野 哲朗1 (1. 大阪大学)

地震時に解放されるエネルギーの大部分は摩擦発熱によって占められる (Chester et al. 2005).そのため,断層に記録されている過去の地震での摩擦発熱の情報を抽出することは重要である.具体的な温度検出指標には,多くが提案されているが,炭質物の熱熟成反応は不可逆的であるため,極めて有効である(Hirono et al., 2015).一方で,地震時の断層では断層滑りに伴い,剪断・発熱に伴い結晶構造の変化や粒子の粉砕化・細粒化などのメカノケミカル効果が生じ,このメカノケミカル効果が炭質物の熱熟成を促進させる可能性が指摘されている(Kitamura et al. 2012 , Kaneki et al. 2018).しかし,炭質物の初期熟成度への影響や加熱時の昇温速度の影響は未だ精査されていない.

そこで本研究では酸処理を行った山口県美祢市桃ノ木の大嶺炭田産の無煙炭と和光純薬工業株式会社のグラファイトに対して大気下のもと,軸荷重1 MPa, 3 MPaで滑り速度1 mm/sの実験条件で高速摩擦試験機を用いて摩擦実験を行った.その後,摩擦実験を行った試料と行っていない試料をガラス管に真空封入したものに対して管状電気炉で300〜1300°Cで100 °C ごとの温度にて,数10 K/秒の昇温速度で10秒間加熱と0.1 K/秒の昇温速度で加熱する2パターンの実験を実施した.加熱前後試料では赤外分光分析,ラマン分光分析を実施し,加熱に伴う炭質物の分子構造の変化について調べた.具体的には,各試料と各温度にて,Aliphatic C-H, Aromatic C-H, C=C bondsの状態変化について赤外分光分析で,グラファイト構造の発達についてラマン分光分析で解析した.

結果,高い昇温速度において無煙炭の赤外分光分析では摩擦後試料の方が低い温度でのピーク消失が確認された.一方グラファイトでは有意な差が得られなかった.すなわち,メカノケミカル効果の炭質物の熱熟成反応に与える影響は炭質物の初期熟成度に依存していると言える.