日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

A会場

一般セッション » S15. 強震動・地震災害

[S15]AM-2

2019年9月16日(月) 10:45 〜 12:00 A会場 (百周年記念ホール)

座長:司 宏俊(株式会社サイスモ・リサーチ)、友澤 裕介(小堀鐸二研究所)

11:00 〜 11:15

[S15-06] 2018年北海道胆振東部地震の広帯域震源モデル

*永井 夏織1、浅野 公之1、岩田 知孝1 (1. 京都大学防災研究所)

2018年9月6日3時7分にMj 6.7の2018年北海道胆振東部地震が発生した.気象庁による震源の深さは約37 kmであり,地震調査委員会(2018)によると,この地殻内地震の震源域を含む地域では,通常の陸域における地殻内の地震よりも深い場所でも多くの地震活動が見られる.したがって,今回のように震源が深く,複数の観測点で最大振幅が100 cm/sに達するような強震動をもたらした地震の震源特性と,この地域の観測点における強震時の地盤のふるまいを知ることは重要である.
この地震の震源近傍における複数の強震記録には,破壊開始点からの直達S波に続き,3つの顕著な波群が見られ,観測点によって波群間の振幅比や走時差が異なっている.それぞれの波群が強震動生成領域(SMGA)[Miyake et al. (2003)]で発生したと仮定し,各波群の到着時刻を読み取り,Asano and Iwata (2012)の方法によりそれぞれの波群を生成したSMGAの破壊開始点について,震源に対する相対的な位置,時刻を推定した.断層面は,浅野・岩田(2019)による強震記録を用いた震源インバージョンで用いられている3つの面から構成されるものを参考にした.その結果,SMGA1(最初の主破壊)の破壊開始点は震央の約8 km南,SMGA2の破壊開始点は震央の約14 km南,SMGA3の破壊開始点は震央の約5 km北に位置し,順に破壊が開始したと推定された.この破壊の進展の特徴は,浅野・岩田(2019)による震源インバージョンの,破壊開始から約5秒後に主破壊が始まって南西に進展し,破壊開始から約11秒前後に北へと破壊が伝播したという特徴とおおまかに一致する.SMGA1,SMGA2の直上にはそれぞれ気象庁震度計47004とK-NET HKD126が存在し,どちらもEW成分で100 cm/sを超える大振幅を記録している.またSMGA3は,震源東側のK-NET HKD103とKiK-net HDKH01で観測された速度波形EW成分における明瞭なパルス波をもたらしたと考えられ,それぞれの波群の振幅の特徴と対応しているように見える.なお,47004とHKD126の2観測点における波形には地盤の非線形応答の影響が見られている.
推定した破壊開始点とK-NET, KiK-net, 気象庁震度計の強震記録を用いて,経験的グリーン関数法[Irikura (1986),入倉・他(1997)]により広帯域地震動を再現するSMGAモデルの構築を試みる.特に3つの波群をよく再現するSMGAモデルの推定によって観測点ごとの強震動の成因を探るとともに,推定したモデルを用いて地盤の非線形応答の影響が見られる観測点における波形を合成し検討を行う.

謝辞
本研究には,国立研究開発法人防災科学技術研究所K-NET,KiK-net,気象庁震度計による強震記録を使用しました.また防災科学技術研究所F-netモーメントテンソル解,気象庁・文部科学省による一元化震源を使用しました.記して感謝申し上げます.