日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S16. 地盤構造・地盤震動

S16P

2019年9月17日(火) 17:00 〜 18:30 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

17:00 〜 18:30

[S16P-13] ネパール・カトマンズ盆地の強震観測点における地盤増幅特性の把握

*重藤 迪子1、高井 伸雄2、Bijukchhen Subeg3、Timisina Chintan 4、Bhattarai Mukunda4、Singh Shova4 (1. 九州大学、2. 北海道大学、3. Khwopa Engineering College, Nepal、4. ネパール 産業省 鉱山地質局)

ネパールはインドプレートとユーラシアプレートの衝突帯に位置し,過去に多くの被害地震が発生している.2015年4月25日にはネパール・ゴルカ地震(Mw 7.8)が発生し,その震央域よりも西側の中央ヒマラヤにおいては地震空白域の存在が指摘されている.我々は,JICA - JST SATREPSプロジェクト(2016-2021年度,ネパールヒマラヤ巨大地震とその災害軽減の総合研究,代表:纐纈一起)の一環として,巨大地震におけるカトマンズ盆地の強震動予測の高精度化を目的として,ネパールの首都カトマンズが位置するカトマンズ盆地において,2016年11月に4地点,2017年11月に5地点,2018年5月に1地点,計10地点新たに強震計を設置し,連続観測を実施している(Takai et al., 2018).設置当初,現地の不安定な電力状況により,データ欠損が多地点・長期間において発生したが,対策を講じ,2018年11月からは安定して記録が得られている.本報告では,本強震観測網で得られた記録を用いて,地震動S波部分のH/Vスペクトル比を求め,各観測点の地盤増幅特性を把握した.

カトマンズ盆地の地質と本観測点位置を下図に示す.カトマンズ盆地は直径約25 kmの山間盆地であり,湖成堆積物が厚く積もり,最深部は600 mを超える(Moribayashi and Maruo,1980).観測点は,盆地境界の北(Jhor)と東(Sanga)の岩盤サイト上に2地点,さらに堆積層上に,2015年ネパール・ゴルカ地震で建物被害が集中した領域(Balaju,Sankhu),Chandragiri断層近傍(Thankot),盆地中央(Sinamangal),観測点密度を考慮して(Thecho,Kapan,Kharipati,Lamatar)それぞれ設置している.これら観測点で記録が得られているML4.3~5.2の5地震の強震観測記録に対して,S波初動到達から40.96秒間のフーリエスペクトルをとり,幅0.1 HzのParzen windowを施した後,水平動成分の2乗平均平方根を鉛直動成分で除して,地震動H/Vスペクトル比を求めた.岩盤サイトのJhorやSangaでは,3~4 Hz程度にピークがあるのに対して,堆積層上では0.2~0.8 Hzの低周波数側にそれぞれピークがある.2015年ネパール・ゴルカ地震時にカトマンズ盆地内で主にRC造建物において,特に甚大な建物被害が集中したBalaju(楠・他,2016)では,0.8 Hz程度に顕著なピークを有しており,建物被害における地盤増幅特性との関係が示唆される.

カトマンズ盆地においては,2011年9月から北海道大学とTribuhvan大学との共同強震観測点(Takai et al., 2016)が4地点,2015年ネパール・ゴルカ地震の臨時余震観測点(2015年5月~7月)として4地点存在し,我々はそれらの観測点で得られた本震および余震記録を用いて,S波速度構造モデルの構築(Bijukchhen et al., 2018)し,その検証を進めている.今後,本観測網における観測記録を加えて検討する予定である.

謝辞 本研究はJICA - JST SATREPS(JPMJSA1511)の助成を受けて実施しました.