日本地震学会2020年度秋季大会

Presentation information

Poster session (Oct. 30th)

Regular session » S01. Theory and analysis method

S01P

Fri. Oct 30, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S01P-06] Development of anisotropic tomography method based on the shortest path method

〇Shoji Sekiguchi1 (1.National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

走時トモグラフィにはまず波線の計算が必要となる。最短経路法を用いた異方性媒質での波線の計算は、各ノードにおいて群速度がわかれば容易に計算できる。ここでは、効率よく計算するために、各ノードで射出角を極座標としたグリッド上で群速度をあらかじめ計算しその内挿によって任意の射出角での群速度を求めることとした(図参照)。波線計算が可能なことは、PREMを異方性媒質として用い、すでに連合大会(2011)S-SS027-P01において示している。等方媒質との波線経路の差が非常に小さいことが報告されている。

異方性媒質での走時時間の変化量と弾性定数の変化量との関係式はZhou & Greenhalgh (2008) によってすでに求められている。したがって、理論的には、万遍なくいろいろな進行方向を持った波線が十分な数各ノード周辺を通過すれば走時データからトモグラフィによって異方性を求めることができる。

一般的には異方性は21個の独立した弾性定数によって表されるが、実際には、クラックや鉱物の結晶構造を反映したより少ない弾性定数をもった異方性媒質に関心が持たれ、その弾性定数と対称軸の方向を求めることが多い。本研究では、その場合での定式化を行った。すなわち、基準の対称軸をZ軸方向としそこから対称軸回りの回転ψ、対称軸を緯度方向θ経度方法φと回転させて異方性媒質を表現することにした。群速度をUとすると∂U/∂mmは弾性定数)はすでにZhou & Greenhalgh (2008)によって求められているので、∂U/∂θ、∂U/∂φ、∂U/∂ψを導出すれば良い。煩雑になるのでここには示さないが、座標回転をするだけなので単純な計算で容易に求められる。azimuthal isotropyのような軸対称の場合はψについて変化がないのでこれを無視することが出来る。さらに対称軸が水平でその面内の方位だけが未知数の場合は、はじめの基準の対称軸をX軸方向としてφのみを未知数として残せば良い。

このように表現した異方性媒質がトモグラフィによって復元できるか、いくつか単純な場合を設定して計算してみた。たとえば対象軸方向θ=30°φ=0°を持ったazimuthal isotropyで最短経路法によって得た計算値を観測値として使い、初期対称軸方向をθ=0°φ=0°とし軸方向が元に戻るか、などである。個々の未知数についてはまだばらつきがあるが、何回か繰り返すにしたがって全体としては収束する方向に変化していることが確認できた。今後はさらに複雑な条件で確認し、また各種パラメータの調整を進めてゆく予定である。