9:15 AM - 9:30 AM
[S02-02] Replay and digitization of analog hydrophone data of the old cabled observatory on deep seafloor off Hatsushima Island in Sagami Bay
海洋研究開発機構(JAMSTEC)が1993年に相模湾初島南東沖水深1175mの海底に設置した海底ケーブル型観測システム「深海底総合観測ステーション」(初島沖ステーション)は,深海環境の多面的な観測を目的としており,地震計のほか,ハイドロフォン,ビデオカメラ,CTD(海水の電気伝導度・水温・深度)センサや電磁流向流速計等の多種類のセンサを搭載していた.初島沖ステーションは,1999年7月に海底ケーブルの地絡障害により一度観測を停止し,その後2000年に更新されている.
海底に設置されたハイドロフォンの信号は,海底ケーブルを通じ初島陸上局においてアナログ信号として出力され,設置当初から1999年7月の停止までの期間は,ペンレコーダに記録されるとともにアナログデータレコーダに連続記録されていた.しかしながら,これまで当該データは本格的に再生・解析されていなかった.ハイドロフォンは,地震に伴うT波をはじめ,水中を伝搬する音響信号を検出することが可能である.岩瀬(2017)では,ビデオカメラによる海底観察の際,ビデオテープの音声トラックに録音されたハイドロフォン信号から,伊豆半島東方沖地震時の泥流に伴う礫の衝突音と推定される信号やホワイトノイズ的な信号を検出している.ビデオカメラによる観察は間欠的に実施されているため,ビデオカメラによる泥流の観測は,複数回発生したうちの一部に限られている.このため,未再生のハイドロフォンデータの解析は泥流や混濁流の解明等にも資する可能性がある.
ハイドロフォン信号の収録には,TEAC製カセットデータレコーダ XR-5000WBが使用された.当該レコーダは,14チャネルのアナログ信号入力インタフェースを有し,VHSビデオテープを記録媒体として周波数変調方式で記録する.通常無人の初島陸上局にて1週間毎にテープを回収するため,全チャネルに同一信号を入力し,テープ(VHS 160分テープ)の走行速度を0.6 cm/sとし,テープの順方向走行時は奇数チャネルに,逆方向走行時は偶数チャネルの信号を順次記録する設定により,1週間の連続記録を可能としていた.収録テープは約300本に及ぶ.時刻はJJYで校正されており,ボタンの手動押下によりBCD(Binary-coded decimal)表現の日付・時刻情報が重畳されることに加え,毎正時と毎時30分にはそれぞれ2個と1個の短時間パルスが観測信号に自動的に重畳されていた.再生手段は当該レコーダに限られるが,はるか以前に生産終了となっており,今回は収録に使用していたレコーダを用いてテープを再生し,出力信号をリニアPCMレコーダ(OLYMPUS LS-100)に収録した.再生時,テープ走行速度を収録時と同じ0.6 cm/sとすると,テープ走行の揺らぎが原因と推定されるノイズが大きい.再生効率も考慮して,テープ走行速度を収録時の8倍の4.76 cm/sとしたところ,同ノイズの低減が見られた.なお,当該レコーダの仕様では,テープ走行速度0.6 cm/s時の収録可能周波数帯域は0.977 kHz以下となっている.図1は,1997年3月3日23:09に発生した伊豆半島東方沖地震(M5.5)を観測した波形例である.
今後,順次再生を進めていく予定であるが,当該レコーダの劣化が著しく,走行が不安定であることに加え,電解コンデンサやその周辺の基板の焼損等の故障も発生し,困難に直面している.使用可能なTEAC製データレコーダ XR-5000WBについての情報があればお知らせ頂けると幸いである.
参考文献
岩瀬,2017年地震学会秋季大会講演予稿集,S11-01,2017.
海底に設置されたハイドロフォンの信号は,海底ケーブルを通じ初島陸上局においてアナログ信号として出力され,設置当初から1999年7月の停止までの期間は,ペンレコーダに記録されるとともにアナログデータレコーダに連続記録されていた.しかしながら,これまで当該データは本格的に再生・解析されていなかった.ハイドロフォンは,地震に伴うT波をはじめ,水中を伝搬する音響信号を検出することが可能である.岩瀬(2017)では,ビデオカメラによる海底観察の際,ビデオテープの音声トラックに録音されたハイドロフォン信号から,伊豆半島東方沖地震時の泥流に伴う礫の衝突音と推定される信号やホワイトノイズ的な信号を検出している.ビデオカメラによる観察は間欠的に実施されているため,ビデオカメラによる泥流の観測は,複数回発生したうちの一部に限られている.このため,未再生のハイドロフォンデータの解析は泥流や混濁流の解明等にも資する可能性がある.
ハイドロフォン信号の収録には,TEAC製カセットデータレコーダ XR-5000WBが使用された.当該レコーダは,14チャネルのアナログ信号入力インタフェースを有し,VHSビデオテープを記録媒体として周波数変調方式で記録する.通常無人の初島陸上局にて1週間毎にテープを回収するため,全チャネルに同一信号を入力し,テープ(VHS 160分テープ)の走行速度を0.6 cm/sとし,テープの順方向走行時は奇数チャネルに,逆方向走行時は偶数チャネルの信号を順次記録する設定により,1週間の連続記録を可能としていた.収録テープは約300本に及ぶ.時刻はJJYで校正されており,ボタンの手動押下によりBCD(Binary-coded decimal)表現の日付・時刻情報が重畳されることに加え,毎正時と毎時30分にはそれぞれ2個と1個の短時間パルスが観測信号に自動的に重畳されていた.再生手段は当該レコーダに限られるが,はるか以前に生産終了となっており,今回は収録に使用していたレコーダを用いてテープを再生し,出力信号をリニアPCMレコーダ(OLYMPUS LS-100)に収録した.再生時,テープ走行速度を収録時と同じ0.6 cm/sとすると,テープ走行の揺らぎが原因と推定されるノイズが大きい.再生効率も考慮して,テープ走行速度を収録時の8倍の4.76 cm/sとしたところ,同ノイズの低減が見られた.なお,当該レコーダの仕様では,テープ走行速度0.6 cm/s時の収録可能周波数帯域は0.977 kHz以下となっている.図1は,1997年3月3日23:09に発生した伊豆半島東方沖地震(M5.5)を観測した波形例である.
今後,順次再生を進めていく予定であるが,当該レコーダの劣化が著しく,走行が不安定であることに加え,電解コンデンサやその周辺の基板の焼損等の故障も発生し,困難に直面している.使用可能なTEAC製データレコーダ XR-5000WBについての情報があればお知らせ頂けると幸いである.
参考文献
岩瀬,2017年地震学会秋季大会講演予稿集,S11-01,2017.