4:00 PM - 5:30 PM
[S02P-03] Accuracy of time and pressure due to calibration intervals by an atomic clock in an ocean bottom pressure gauge
1.はじめに
海底圧力計(OBP)は、海底の隆起沈降を連続的に観測でき、スロースリップ(SSE)の観測等に非常に有用である。例えば、Sato et al. (GRL, 2017)は、2014年の房総沖SSEによる上下変動(約2cm)を捉えることに成功した。また、村田 他(JpGU, 2020)は、2018年の房総沖SSEの変動を多点特異スペクトル解析を用いて捉えている。OBPに用いている圧力計は、Paroscientific社のセンサーで、圧力を水晶発振の周波数として出力している。周波数はOBP内部のクロックによって計測している。従って、このクロックが正確でないと、正しい圧力観測が行えないことになる。我々のOBPでは、クロックの精度を保つため、原子時計(Microsemi社CSAC SA.45s)を用いて一定間隔でクロックを較正している。理想的にはクロックを原子時計で常時較正すればよいが、電力の限られるOBPでは、原子時計の常時使用は、観測期間の短縮になってしまう。本研究は、様々な較正間隔でのクロックの精度を測定し、観測精度と観測期間が両立する較正間隔を見出すことを目的としている。
2.計測方法と評価方法
計測は、実際の観測と同じくOBPをセットして、そこから時間信号(1分パルス)を取り出してGPS時計との時間差を取ることで行った。1つの較正間隔に対して約4週間の長期計測を行った。
評価方法は、以下の通りである。クロックの規定周波数をf0とする。このクロックの実際の周波数が、f=f0+fdであるとすると、このクロックの1秒はf0/fとなる。
1(このクロックの1秒): f0/f = S(このクロックの秒): 1(真の1秒)
より
S = f/f0 = 1+fd/f0 = 1+r
となる。これは、例えば周波数が10%(r = 0.1)大きくなればクロックの進みも10%早くなることを意味する。
測定した時間差dは、S-1を積分したものになるので、d = rt となる。実際はクロックの周波数は時間変化するので、それをr(t)とすると、測定した時間差d(t)はr(t)を積分したものになる。つまり、時間差を時間で微分するとクロックの周波数変化r(t)を出すことができる。この周波数変化が小さいほど精度が良いことになる。
3.結果
計測は室内で行った。較正間隔は、常時較正、1時間間隔で5分間較正、12時間間隔で5分間較正、無較正の4種類、それぞれ約4週間の計測を行った。同時に室温の計測も行っている。周波数変化は時間差の差分を取ることで算出した。
計測の結果、周波数変化は、常時較正の場合 -3.3x10-9 ~ 1.0x10-9、1時間の場合 -6.3x10-9 ~ 3.0x10-9、12時間の場合 -8.0x10-9 ~1.5x10-8、無較正の場合 -3.8x10-8 ~ 3.7x10-8で変化した。この周波数変化による圧力の見かけの変化は水深換算すると、最大0.22 mm(常時較正)、0.47 mm(1時間)、1.17 mm(12時間)、3.80 mm(無較正)となる。Sato et al. (GRL, 2017)の結果からOBPによる水深変化の誤差は10 mm程度であるので、12時間間隔以下ならば十分な精度で観測できることになる。我々のOBP(40 cmガラス球)の稼働可能期間は、9か月(常時較正)、14か月(1時間)、15か月(12時間、無較正)であるので、観測期間を1年とすれば、1時間または12時間間隔較正で設定するのが良いということになる。
謝辞
海底圧力計とGPS時計の稼働につきましては株式会社東京測振の方々にご協力をいただきました。ここに記して御礼申し上げます。
海底圧力計(OBP)は、海底の隆起沈降を連続的に観測でき、スロースリップ(SSE)の観測等に非常に有用である。例えば、Sato et al. (GRL, 2017)は、2014年の房総沖SSEによる上下変動(約2cm)を捉えることに成功した。また、村田 他(JpGU, 2020)は、2018年の房総沖SSEの変動を多点特異スペクトル解析を用いて捉えている。OBPに用いている圧力計は、Paroscientific社のセンサーで、圧力を水晶発振の周波数として出力している。周波数はOBP内部のクロックによって計測している。従って、このクロックが正確でないと、正しい圧力観測が行えないことになる。我々のOBPでは、クロックの精度を保つため、原子時計(Microsemi社CSAC SA.45s)を用いて一定間隔でクロックを較正している。理想的にはクロックを原子時計で常時較正すればよいが、電力の限られるOBPでは、原子時計の常時使用は、観測期間の短縮になってしまう。本研究は、様々な較正間隔でのクロックの精度を測定し、観測精度と観測期間が両立する較正間隔を見出すことを目的としている。
2.計測方法と評価方法
計測は、実際の観測と同じくOBPをセットして、そこから時間信号(1分パルス)を取り出してGPS時計との時間差を取ることで行った。1つの較正間隔に対して約4週間の長期計測を行った。
評価方法は、以下の通りである。クロックの規定周波数をf0とする。このクロックの実際の周波数が、f=f0+fdであるとすると、このクロックの1秒はf0/fとなる。
1(このクロックの1秒): f0/f = S(このクロックの秒): 1(真の1秒)
より
S = f/f0 = 1+fd/f0 = 1+r
となる。これは、例えば周波数が10%(r = 0.1)大きくなればクロックの進みも10%早くなることを意味する。
測定した時間差dは、S-1を積分したものになるので、d = rt となる。実際はクロックの周波数は時間変化するので、それをr(t)とすると、測定した時間差d(t)はr(t)を積分したものになる。つまり、時間差を時間で微分するとクロックの周波数変化r(t)を出すことができる。この周波数変化が小さいほど精度が良いことになる。
3.結果
計測は室内で行った。較正間隔は、常時較正、1時間間隔で5分間較正、12時間間隔で5分間較正、無較正の4種類、それぞれ約4週間の計測を行った。同時に室温の計測も行っている。周波数変化は時間差の差分を取ることで算出した。
計測の結果、周波数変化は、常時較正の場合 -3.3x10-9 ~ 1.0x10-9、1時間の場合 -6.3x10-9 ~ 3.0x10-9、12時間の場合 -8.0x10-9 ~1.5x10-8、無較正の場合 -3.8x10-8 ~ 3.7x10-8で変化した。この周波数変化による圧力の見かけの変化は水深換算すると、最大0.22 mm(常時較正)、0.47 mm(1時間)、1.17 mm(12時間)、3.80 mm(無較正)となる。Sato et al. (GRL, 2017)の結果からOBPによる水深変化の誤差は10 mm程度であるので、12時間間隔以下ならば十分な精度で観測できることになる。我々のOBP(40 cmガラス球)の稼働可能期間は、9か月(常時較正)、14か月(1時間)、15か月(12時間、無較正)であるので、観測期間を1年とすれば、1時間または12時間間隔較正で設定するのが良いということになる。
謝辞
海底圧力計とGPS時計の稼働につきましては株式会社東京測振の方々にご協力をいただきました。ここに記して御礼申し上げます。