日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 31th)

Regular session » S02. Seismometry and monitoring system

S02P

Sat. Oct 31, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S02P-04] Calibration of instrument responses in high-density broadband seismograph networks based on teleseismic waveform data

〇Takeshi Kimura1 (1.National Research Institute for Earth Science and Disaster Reisilience)

広帯域地震計は広い周期帯域の地動速度に対して平坦な応答特性を持ち,その観測データは地震学における重要なツールの1つである.一方で,観測データから地動への変換に必要な地震計の応答特性が製造者からの提供情報と異なるケースが報告されており,このような特性の異常を判定する手法がいくつか提案されている(例えば,Kimura et al. [2015]).これらの手法は観測網を運用する際の監視ツールとして有用であることに加えて,データのユーザーにとっても該当データを解析に使用するかどうか判断する上で重要な情報をもたらす.さらに,異常な状態の地震計特性を推定しデータを適切に補正することができれば,解析に利用できるデータ量が増え結果の精度向上等に貢献することが見込まれる.本研究では,観測点間隔が約100kmという広帯域地震観測網としては高密度なF-netを対象に,遠地地震時の表面波記録を観測点間で相互に比較することにより,地震計の応答特性のキャリブレーションを行った.

 Kimura et al. [2015]により特性異常が明らかになっているF-netの斜里(N.SHRF)と泊(N.TMRF)観測点を対象にキャリブレーションを行った.Global CMTカタログより2000年から2018年の間に発生した深さ50km以浅,Mw6.5以上の471地震のうち,震央距離2000-14000kmの観測記録(1Hzサンプリング,上下動成分)を用いた.製造者から提供されている応答特性により観測データを補正した後,表面波部分(データ長2048秒)の振幅スペクトルについて対象観測点から200km以内の複数観測点での観測データとのスペクトル比を利用した.互いに近接した観測点の遠地地震波形はほぼ同一であるため,このスペクトル比は地震計の応答特性が正常であれば全ての周期で1になり,異常があれば1から外れることが見込まれる.本研究では,このスペクトル比から対象観測点の地震計特性の感度,長周期側のコーナー周期,ダンピング定数の補正値を推定する.計算したスペクトル比は時系列に沿って50記録ずつスタックし補正値の推定に用いた.スタックの際にはBootstrap法により200のBootstrapサンプルを生成し,推定値の誤差評価に用いた.

 上述の解析の結果,N.SHRF観測点では2002年の観測開始から2012年まで,コーナー周期,ダンピング定数に明らかな異常はなかったが,感度が提供情報の約0.5であったことが推定できた.また,N.TMRF観測点では,感度に異常は見られなかったが,コーナー周期とダンピング定数が2000年から2011年まで時間変化しており,特にダンピング定数が2011年には2程度にまで増加していることが分かった.

 このような補正値の推定を観測網全体に対して行うことで,観測データの品質の向上につながるような情報の提供が可能になることが見込まれる.