10:30 〜 10:45
[S03-01] GNSS変位速度場から推定したネパール・ヒマラヤ主要断層帯の地震間プレートカップリング
ネパールの国土の大部分はインドプレートとユーラシアプレートの収束境界域の上盤側に位置し,直下で発生する逆断層型地震は直接的な脅威である.最近では2015年Gorkha地震 (Mw 7.8) が記憶に新しいが,この地震の震源域の西方には,過去数百年間にわたって顕著な地震が発生していない広大な地震空白域が広がっている.2016年に開始された地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム「ネパールヒマラヤ巨大地震とその災害軽減の総合研究」(通称NERDiM)の一環として,我々はネパール中部・中西部に計10点のGNSS連続観測点を設営した.我々の観測網は,ネパール国内に既設のGNSS観測網を補間しながら,地震空白域における観測強化を目指している.最終的には,既設観測網のデータも含めてネパール全土の詳細な変位速度場とひずみ速度場を算出し,測地学的側面からヒマラヤ主要断層帯の地震ポテンシャル評価を行うことを目標としている.
UNAVCO経由でデータ入手可能なネパール国内のGNSS観測点の総数は50に近いが,安定して観測が継続されているものは半数に満たない.今回は,GIPSY/OASIS II ver.6.4のPPP-AR法を用い,NERDiM観測点を加えた2004-2019年の期間のすべてのデータより日々の座標解を算出し,観測期間の長短に関わらず観測点の平均変位速度を求めた.さらに,変位速度場を空間補間し,ひずみ速度場を導いた.結果を要約すると,ユーラシアに対するインドプレートの北進を反映して,ネパール国内では南北方向の10-15 mm/yrの短縮変形が卓越する.ひずみ速度に換算して約0.1 ppm/yrとなる.すなわち,インド-ユーラシアの相対運動速度 (36-37 mm/yr,DeMets et al., 2010) の約30-40%がヒマラヤ前縁域の短縮変形に費やされている.NERDiM観測網は,とくにインド国境に近いプレート境界周辺の空間分解能の向上に大きく貢献している.
GNSS平均変位速度場を用い,インド・ユーラシアプレート境界面における地震間の固着分布を推定した.従来の推定では,ほぼ平坦な断層面が北へ向かって10°程度の緩やかな角度で傾き下がるモデルが用いられてきた (例えばStevens and Avouac, 2015).それによると,地表から深さ20 km程度までほぼ一様な強い固着が求められている.一方,2015年Gorkha地震発生の構造地質学的考察から,深さごとに急傾斜の断層セグメントと緩傾斜のセグメントが交互につながってプレート境界面を構成するモデルが提唱されている (Hubbard et al., 2016).今回は,この後者のモデルを採用した.固着するプレート境界面の下限を深さ35 kmと仮定し,深さ5 kmごとの等深線に沿って30-40 km間隔にノードを設定した.TDEFNODE (McCaffrey, 2009) を用い,各ノードにおけるすべり欠損速度を推定した.プレート相対運動速度で規格化した固着率は,プレート境界面の形状と強い相関を持つ.すなわち,緩傾斜のセグメント上では非常に強い固着を,急傾斜のセグメント上ではほぼゼロに近い弱い固着を示す.今回の結果は予備的な解析によるものであるが,単純なプレート境界面形状を用いた従来の結果とは大きく異なる.プレート間固着が境界面形状のみに規定されるものかどうか,今回採用したモデルが実際の広域の構造を正しく反映したものかどうか,さらなる検証が必要である.
UNAVCO経由でデータ入手可能なネパール国内のGNSS観測点の総数は50に近いが,安定して観測が継続されているものは半数に満たない.今回は,GIPSY/OASIS II ver.6.4のPPP-AR法を用い,NERDiM観測点を加えた2004-2019年の期間のすべてのデータより日々の座標解を算出し,観測期間の長短に関わらず観測点の平均変位速度を求めた.さらに,変位速度場を空間補間し,ひずみ速度場を導いた.結果を要約すると,ユーラシアに対するインドプレートの北進を反映して,ネパール国内では南北方向の10-15 mm/yrの短縮変形が卓越する.ひずみ速度に換算して約0.1 ppm/yrとなる.すなわち,インド-ユーラシアの相対運動速度 (36-37 mm/yr,DeMets et al., 2010) の約30-40%がヒマラヤ前縁域の短縮変形に費やされている.NERDiM観測網は,とくにインド国境に近いプレート境界周辺の空間分解能の向上に大きく貢献している.
GNSS平均変位速度場を用い,インド・ユーラシアプレート境界面における地震間の固着分布を推定した.従来の推定では,ほぼ平坦な断層面が北へ向かって10°程度の緩やかな角度で傾き下がるモデルが用いられてきた (例えばStevens and Avouac, 2015).それによると,地表から深さ20 km程度までほぼ一様な強い固着が求められている.一方,2015年Gorkha地震発生の構造地質学的考察から,深さごとに急傾斜の断層セグメントと緩傾斜のセグメントが交互につながってプレート境界面を構成するモデルが提唱されている (Hubbard et al., 2016).今回は,この後者のモデルを採用した.固着するプレート境界面の下限を深さ35 kmと仮定し,深さ5 kmごとの等深線に沿って30-40 km間隔にノードを設定した.TDEFNODE (McCaffrey, 2009) を用い,各ノードにおけるすべり欠損速度を推定した.プレート相対運動速度で規格化した固着率は,プレート境界面の形状と強い相関を持つ.すなわち,緩傾斜のセグメント上では非常に強い固着を,急傾斜のセグメント上ではほぼゼロに近い弱い固着を示す.今回の結果は予備的な解析によるものであるが,単純なプレート境界面形状を用いた従来の結果とは大きく異なる.プレート間固着が境界面形状のみに規定されるものかどうか,今回採用したモデルが実際の広域の構造を正しく反映したものかどうか,さらなる検証が必要である.