日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S03. 地殻変動・GNSS・重力

[S03]AM-2

2020年10月31日(土) 10:30 〜 12:00 B会場

座長:日置 幸介(北海道大学理学研究院)、座長:三井 雄太(静岡大学理学部)

11:15 〜 11:30

[S03-04] トンガ海溝における大きなスラブ内地震間のスローイベント

〇三井 雄太1、村松 雛子2、田中 優作3 (1.静岡大学理学部、2.元・静岡大学理学部、3.東京大学地震研究所)

本研究では、世界で最も深発地震が活動的なトンガ海溝沈み込み帯における、地殻変動と地震活動に注目する。データとしては、GNSS変位時系列(Blewitt et al., 2018)とANSS地震カタログを用いる。トンガのGNSSデータには、2006年5月3日に海溝近傍で発生したM8.0のスラブ内地震による地震時変位と余効変動が明確に記録されている。そのため、それ以前のデータを定常変動と仮定してデトレンドを行い、非定常変動の推定を行った。これと比較するため、地震カタログから沈み込み帯の浅部~深部にかけての背景地震活動率(ETAS model; Ogata, 1988)を1年ごとに推定し、その時間変化を追った。

我々は、トンガのトンガタプ島・ヴァヴァウ島のGNSS観測点において、2009年9月29日に数百km北方のサモア諸島沖で発生したM8.1のスラブ内地震直後から非定常変動(~数cm)が発生していることを発見した。この非定常変動は海溝方向を向いており、2009年サモア地震の余効変動(Han et al., 2019)そのものというよりは、別種の独立したスローイベントが2009年サモア地震によって誘発されたと考えられる。このイベントは、プレート境界の逆断層すべり(スロースリップイベント)としても解釈できるが、2006年スラブ内地震の余効変動が再加速したという見方も可能である。この非定常変動は数年継続し、2013年5月23日のスラブ内地震(M7.4)の発生時期には収束していた。一方、地震活動の解析からは、2009年サモア地震から2013年のスラブ内地震の時期にかけて、前後の時期よりも深さ400km以深の背景地震活動率が数十%低下していたことがわかった。

以上のことから我々は、2009年サモア地震(M8.1)から2013年スラブ内地震(M7.4)にかけて、トンガ海溝沈み込み帯の少なくとも一部で、浅部から深部にまで影響を与える"スローイベント"が発生していたと考える。その実態は、プレート境界でのスロースリップイベントやプレート沈み込みの一時的加速など、他の場所で報告されてきた現象と同種のものであるかもしれないが、沈み込み帯における浅い地震と深い地震の関連性についても新たな知見を与えるものである。