1:00 PM - 1:15 PM
[S03-07] Limitation of the interplate coupling estimation at Kuril Trench around Nemuro-oki, eastern Hokkaido, Japan deduced from GEONET, and the possible contribution of newly constructed GNSS-A sites
千島海溝沿いにある北海道根室沖は,陸域のGNSSデータ解析から大きなすべり欠損速度分布が推定されており(例えば,Hashimoto et al., 2009),次のプレート境界型大地震が発生する可能性が高い場所として注目されている地域である.また,この地域の津波の痕跡からは,17世紀に十勝沖から根室沖にわたる広範囲で超巨大地震が発生し,2011年東北地方太平洋沖地震のようにプレート境界浅部の断層がすべった可能性が示唆されている(Ioki and Tanioka, 2016).そのため,このような海溝近くのプレート境界浅部の固着状態を推定することは,起こりうる地震の規模を予測するためにも重要であるが,距離が離れた陸域の観測のみからの推定には限界がある.このため,2019年7月に北海道大学・東北大学・東大地震研の共同研究により,根室沖の海底に3点のGNSS-A観測点が設置され,1回目の観測点の座標値推定が実施された(太田・他,2019地震学会).2020年10月に2回目の航海が予定されており,順調に行けば今年中に最初の地殻変動速度が得られると期待される.
これに先立ち本研究では,陸域のGNSS観測点による固着分布の検出限界を調べるとともに,新設されたGNSS-A観測点が,陸域のGNSS観測点では検出できない地域の固着分布推定にどのように貢献しうるのかを定量的に検討する.まずは陸域のGNSS観測点が,固着分布の違いによってどの程度変化するのかを調べる.本研究では,より現実的なプレート形状を仮定するため,ブロック断層モデルの1つであるTDEFNODE(McCaffrey, 2009)を用いて各点のノードにIwasaki et al. (2015)のプレート形状を与えて,試行錯誤的なフォワード計算から推定を行った.ブロックの相対的な剛体回転はプレート運動モデルGSRMv2(Kreemer et al., 2014)で定義し,ブロック境界となる断層に様々な滑り欠損分布を与え,半無限均質弾性体を仮定したOkada (1992)によって各点での変位場,速度場を求めた.
先行研究等から固着の下限を60 kmと仮定してそれ以浅の固着率を1としたが,陸域の観測点から遠い深さ0-10 km,0-20 kmのプレート境界面の固着率を0.5や0.0のように変化させた場合と,深さ0-60 kmにおいてフルカップリングさせた場合の計算値を比較すると,深さ0-10kmの固着率を変化させても陸域のGNSS観測点の速度場に大きな変化は生じないことがわかった.深さ0-20kmについては,固着率を0.5に変化させても深さ0-10kmの場合と同様に大きな変化はなかったが,固着率を0.0とした場合は陸域のGNSS観測点で最大1.5cm/yほどの変化が生じた.海溝近くのプレート境界浅部の固着状態を変化させても陸域の観測網のみからはそのシグナルの検出能力が低下することが報告されているように(Yokota et al., 2016),本研究においても特に深さ10kmよりも浅いところについては陸域のみの観測網では固着状況を推定することが難しいことを確認した.一方で,同様の変化を与えてプレート境界浅部に近いGNSS-A観測点の予測値を見ると,深さ0-10 kmの領域で,0.5程度の固着率の変化させた場合,それに対応して水平成分では3cm/y以上,上下成分では最大0.8cm/y程度の違いが生じる.海底地殻変動の観測精度は,他の地域の先行研究などから水平成分で2-3cm/y程度と考えられているため,この誤差を考慮しても観測点周辺の固着率を検出可能と考えられる.上下成分については,水平成分よりも誤差が大きくなるため,固着率の細かい違いについては議論が難しいかもしれないが,今後の繰り返し観測による精度向上により,水平成分の結果をサポートする情報が得られる可能性がある.現在,プレート境界に沿って一様な固着分布を与えて簡易的な計算を行っているが,今後,17世紀型の超巨大地震(Ioki and Tanioka., 2016)におけるプレート境界浅部の固着分布を設定して計算するなど,走行方向にも変化する固着分布に対してGNNS-A観測点がどのような感度を持つか検討し,プレート境界浅部の固着の可能性やその状態について検討を行う.
これに先立ち本研究では,陸域のGNSS観測点による固着分布の検出限界を調べるとともに,新設されたGNSS-A観測点が,陸域のGNSS観測点では検出できない地域の固着分布推定にどのように貢献しうるのかを定量的に検討する.まずは陸域のGNSS観測点が,固着分布の違いによってどの程度変化するのかを調べる.本研究では,より現実的なプレート形状を仮定するため,ブロック断層モデルの1つであるTDEFNODE(McCaffrey, 2009)を用いて各点のノードにIwasaki et al. (2015)のプレート形状を与えて,試行錯誤的なフォワード計算から推定を行った.ブロックの相対的な剛体回転はプレート運動モデルGSRMv2(Kreemer et al., 2014)で定義し,ブロック境界となる断層に様々な滑り欠損分布を与え,半無限均質弾性体を仮定したOkada (1992)によって各点での変位場,速度場を求めた.
先行研究等から固着の下限を60 kmと仮定してそれ以浅の固着率を1としたが,陸域の観測点から遠い深さ0-10 km,0-20 kmのプレート境界面の固着率を0.5や0.0のように変化させた場合と,深さ0-60 kmにおいてフルカップリングさせた場合の計算値を比較すると,深さ0-10kmの固着率を変化させても陸域のGNSS観測点の速度場に大きな変化は生じないことがわかった.深さ0-20kmについては,固着率を0.5に変化させても深さ0-10kmの場合と同様に大きな変化はなかったが,固着率を0.0とした場合は陸域のGNSS観測点で最大1.5cm/yほどの変化が生じた.海溝近くのプレート境界浅部の固着状態を変化させても陸域の観測網のみからはそのシグナルの検出能力が低下することが報告されているように(Yokota et al., 2016),本研究においても特に深さ10kmよりも浅いところについては陸域のみの観測網では固着状況を推定することが難しいことを確認した.一方で,同様の変化を与えてプレート境界浅部に近いGNSS-A観測点の予測値を見ると,深さ0-10 kmの領域で,0.5程度の固着率の変化させた場合,それに対応して水平成分では3cm/y以上,上下成分では最大0.8cm/y程度の違いが生じる.海底地殻変動の観測精度は,他の地域の先行研究などから水平成分で2-3cm/y程度と考えられているため,この誤差を考慮しても観測点周辺の固着率を検出可能と考えられる.上下成分については,水平成分よりも誤差が大きくなるため,固着率の細かい違いについては議論が難しいかもしれないが,今後の繰り返し観測による精度向上により,水平成分の結果をサポートする情報が得られる可能性がある.現在,プレート境界に沿って一様な固着分布を与えて簡易的な計算を行っているが,今後,17世紀型の超巨大地震(Ioki and Tanioka., 2016)におけるプレート境界浅部の固着分布を設定して計算するなど,走行方向にも変化する固着分布に対してGNNS-A観測点がどのような感度を持つか検討し,プレート境界浅部の固着の可能性やその状態について検討を行う.