日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 31th)

Regular session » S03. Crustal deformation, GNSS, and gravity

S03P

Sat. Oct 31, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S03P-02] Long-term SSE along the Nankai trough detected by GEONET

〇Shinzaburo Ozawa1, Ryouji Kawabata1, Hiroshi Munekane1 (1.Geospatial Authority of Japan)

要旨

GNSS観測により、2018年以降、九州・四国・紀伊水道・志摩半島域で遷移的な地殻変動が観測された。観測された地殻変動から南海トラフ域のプレート間滑りを推定した。その結果、2018年6月頃から2019年8月頃にかけて、日向灘北部・豊後水道域でSSEが発生し、2019年初めころから2020年7月にかけて四国中部でSSEが発生していること、2019年4月頃から2020年初めころにかけて紀伊水道でSSEが発生し、2019年初めころから2020年4月頃にかけて志摩半島でSSEの発生が推定された。2019年の一時期には、日向灘北部・豊後水道・四国中部・紀伊水道・志摩半島で長期的SSEが同時に発生していたことがわかった。

はじめに

豊後水道では5~6年ほどの周期で繰り返し長期的SSEが発生してきた。四国中部では1977-1980年に水準測量の結果から長期的SSEの発生が推定されている。紀伊水道の長期的SSEは、1996, 2000, 2016年に発生している。志摩半島SSEは、2017-2018年に発生していた。そのような中、2018年6月頃から、九州北部で遷移的な地殻変動が発生し、その後2018年10月頃から豊後水道周辺で遷移的な地殻変動が発生している。また四国中部で2019年初めころから豊後水道SSEに伴う地殻変動と異なった遷移変動が発生している。紀伊水道周辺では2019年4月頃から遷移的な地殻変動が観測され、志摩半島域では、2019年初めころから遷移的な地殻変動が捉えられている。本研究では、GNSSで観測された地殻変動のデータから、四国・九州・紀伊水道・志摩半島域のプレート間滑りの時空間変化を推定した。

解析手法

GNSSによる、観測点の座標時系列から、2013-2019年間の年周、半年周成分を三角関数の重ね合わせで推定し、元の座標時系列からとり除いた。周期成

分を取り除いた時系列から九州・四国域、紀伊水道域の解析では2017-2018年間の一次トレンドを志摩半島の解析では2016年3月から2017年3月の一次トレンドを差し引いている。このようにして得られた東西、南北、上下の座標時系列データを用いて時間依存のインバージョン解析を九州・四国域、紀伊水道域、志摩半島域で行った。観測点は南海トラフ域の観測点約250点を使用した。弘瀬他(2008)によりコンパイルされたフィリピン海プレートの形状を三角形要素で表して解析に使用している。グリッド間隔は、凡そ20-40km程としている。プレート境界面上のすべりの方向はプレート収束方向になるように拘束をかけた。

結果と考察

2018年6月頃から2019年8月頃にかけて日向灘北部・豊後水道でSSEが発生している。豊後水道SSEと同時期に四国中部でSSEが発生し、2020年7月まで継続している。紀伊水道のSSEは、2019年4月頃から発生し、2020年初めころに終息している。志摩半島SSEは2019年初めころから発生し、2020年4月ころに終息している。2019年の一時期には、日向灘北部・豊後水道、四国中部、紀伊水道、志摩半島で長期的SSEが同時に発生していたことがわかった。豊後水道SSEはMw6.9、四国中部SSEはMw6.1、紀伊水道SSEはMw6.1、志摩半島SSEはMw6.2程度と推定された。豊後水道SSEはおおよそ5-6年周期と調和的で、四国中部は、1977-1980年に発生し、2013年に発生しているが、その繰り返し間隔はあまり周期的でないように見える。紀伊水道SSEも発生間隔は周期的に見えない。志摩半島SSEは繰り返し間隔はわかっておらず、2017-18年に発生していたものが2018年に収まって2019年に発生しており、一連のSSEなのか、別々のSSEなのかはっきりしない。