16:00 〜 17:30
[S03P-06] 東北地方太平洋沖地震の余効変動予測の検証2020
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の余効変動の時系列に関数近似を行うという予測実験を通して、広域にわたる余効変動の将来推移予測の実力と課題を示す。東北沖地震の余効変動は,主にプレート境界面上の余効すべりと上部マントルの粘弾性緩和により生じていると考えられており、こうした物理現象発生過程のより正確な推定のためにも有効と考えられる。本報告では、2020年初頭までの地殻変動データを用いて、余効変動予測の検証を行った
Tobita (2016)により,下記の式で表される対数・指数関数の混合モデルを用いることで、短・中期的な時間推移とともに、場所によって異なる余効変動の空間分布も予測できることが示されている。
D(t)=a ln(1+t/b)+c+d ln(1+t/e)-f exp(-t/g)+Vt
ここで、D(t)は余効変動時系列の各成分、tは地震後の日数、lnは自然対数、b, e, g は全観測点に共通の対数関数または指数関数の緩和時定数、Vは観測点ごとの定常速度である。
図1に、電子基準点「宮古」の東西及び上下成分の観測値・予測値及び2年間の予測に基づく残差を示した。予測値は観測値に対して2015年2月まではほぼ1cm以内で一致していたが、その後、2015年2月の三陸沖の地震(M6.9)、5月の宮城沖の地震(M6.8)の頃から異なった傾向となった。つまり、2015年に、それまで続いていた東北地方大洋沖地震の余効変動とは異なる別の事象が発生し、余効変動の予測モデルの前提が崩れてしまったことが覗える。このことを図2の範囲の電子基準点全体でみてみると、2年間の予測に基づく3.9年後の残差の標準偏差は水平で1.3mm、上下で3mm程度であったが、8.9年後では水平で1.7cm、上下で1.2cm程度と拡大している。
しかしながら、中部地方から北海道南部にかけて、1mを超える東北地方太平洋沖地震の余効変動を8.9年後においても数cm程度の精度で予測できており、房総半島のSSE等の余効変動ではない別のローカルな事象の発生の検出に本予測は極めて有効である。
求められた時定数のうち短周期(時定数1.5日程度。上式第1項)の地震後3年時での空間分布を図2に示す。この成分は三陸及び銚子付近で大きくなり、余効すべりの影響を表している。別途、粘弾性モデルから計算された余効すべり成分(Suito 2017)と比べてみると、空間分布の傾向はよく似ている。予測に用いた時空間関数は純粋に統計的に求められたものであるものの、地下の物理過程を反映しており、余効変動以外の予測への応用が期待される。
参考文献
Suito H (2017) Earth Planets Space. https://doi.org/10.1186/s40623-017-0611-9
Tobita M (2016) Earth Planets Space. https://doi.org/10.1186/s40623-016-0422-4
Tobita (2016)により,下記の式で表される対数・指数関数の混合モデルを用いることで、短・中期的な時間推移とともに、場所によって異なる余効変動の空間分布も予測できることが示されている。
D(t)=a ln(1+t/b)+c+d ln(1+t/e)-f exp(-t/g)+Vt
ここで、D(t)は余効変動時系列の各成分、tは地震後の日数、lnは自然対数、b, e, g は全観測点に共通の対数関数または指数関数の緩和時定数、Vは観測点ごとの定常速度である。
図1に、電子基準点「宮古」の東西及び上下成分の観測値・予測値及び2年間の予測に基づく残差を示した。予測値は観測値に対して2015年2月まではほぼ1cm以内で一致していたが、その後、2015年2月の三陸沖の地震(M6.9)、5月の宮城沖の地震(M6.8)の頃から異なった傾向となった。つまり、2015年に、それまで続いていた東北地方大洋沖地震の余効変動とは異なる別の事象が発生し、余効変動の予測モデルの前提が崩れてしまったことが覗える。このことを図2の範囲の電子基準点全体でみてみると、2年間の予測に基づく3.9年後の残差の標準偏差は水平で1.3mm、上下で3mm程度であったが、8.9年後では水平で1.7cm、上下で1.2cm程度と拡大している。
しかしながら、中部地方から北海道南部にかけて、1mを超える東北地方太平洋沖地震の余効変動を8.9年後においても数cm程度の精度で予測できており、房総半島のSSE等の余効変動ではない別のローカルな事象の発生の検出に本予測は極めて有効である。
求められた時定数のうち短周期(時定数1.5日程度。上式第1項)の地震後3年時での空間分布を図2に示す。この成分は三陸及び銚子付近で大きくなり、余効すべりの影響を表している。別途、粘弾性モデルから計算された余効すべり成分(Suito 2017)と比べてみると、空間分布の傾向はよく似ている。予測に用いた時空間関数は純粋に統計的に求められたものであるものの、地下の物理過程を反映しており、余効変動以外の予測への応用が期待される。
参考文献
Suito H (2017) Earth Planets Space. https://doi.org/10.1186/s40623-017-0611-9
Tobita M (2016) Earth Planets Space. https://doi.org/10.1186/s40623-016-0422-4