4:00 PM - 5:30 PM
[S03P-08] Development of analysis tool “GARPOS” for open GNSS-A
GNSS-A(GNSS-音響測距結合方式)による海底測地観測は,海上保安庁や大学等,複数の機関で実施されているが,データはそれぞれ独自のフォーマットで収集され,独自のルーチンで処理・解析される.他方で,GNSS-A解析において必要となるデータは原則として観測手法によらないため,GNSS観測のRINEXのような互換性のある共通データフォーマットを作成することで,データ交換や検証を促進することができる.渡邉・他(2019, 地震学会秋季大会)は,具体的なフォーマットを提案したが,こうした取り組みを進めることで,観測機関以外の研究者にも広くデータが提供され,解析技術の高度化にもつながることが期待される.本研究では,提案した共通フォーマットを扱うベースソフトウェアGARPOS(GNSS-Acoustic Ranging combined POsitioning Solver)を新たに開発した.本講演では,その概要について紹介する.
既存のGNSS-A解析手法と比較した際のGARPOSの最大の特徴は,海底局アレイ上の海域を広く移動しながら観測を行う移動型GNSS-A観測のデータから,海洋音速場の空間的な傾斜構造とその変化を,海底局位置と同時に推定できる点にある.初期の解析手法であるFujita et al. (2006, EPS) や Ikuta et al. (2008, JGR) のアルゴリズムでは,船が移動することによる音速場の位置変化も,見かけの時間変化として推定していた.その後,2010年代になると,海洋のより深部における傾斜構造も誤差因として注目されるようになった.例えば,Yasuda et al. (2017, GRL) や Honsho et al. (2019, JGR) が所与の深さまでの一次元傾斜を推定するモデル(一次傾斜モデル)を構築している.また,Yokota et al. (2019, MGR) は,傾斜を仮定しない従来の推定結果の残差をさらに詳細に解析することで,個々の海底局位置に依存した音線の違いによる音速変化を抽出する手法を開発した.それに対し,提案手法では,具体的な傾斜構造をあらかじめモデル化することなく,あくまで音線の両端位置と時刻の関数として取り扱い,その摂動場を海底局位置と同時に推定する.提案したモデルは,既存の一次元傾斜モデルをその特殊な例として包含しており,より複雑な場も推定することができる.
ただし,このような複雑な音速場の同時抽出は,データに対する過剰適合を容易に引き起こす.そこで,提案手法では,データ誤差の分散共分散の非対角成分を導入することで,時空間的に近い音線を取るデータの相関が高くなるという仮定を表現した.その相関長はハイパーパラメータとして制御し,音速摂動場の時間変化の滑らかさ等を制御する他のハイパーパラメータも含め,適切なモデルをABIC(赤池ベイズ情報量基準; Akaike, 1980)を最小化するように選択するスキームとした.これにより,過剰適合を抑制することに成功し,時間的になめらかに変動する音速摂動場を得ることができた.
海底測位解については,実際のGNSS-A観測データを用いた解析から,既存の手法(Yokota et al., 2019, MGR)と同等の安定性で解を得られることを確認した.さらに,ブイ等を用いて定点で音響観測をする構成のデータについても,分解能がないために音速場の推定はできないものの,GARPOSを用いて適切に解析できることも確認した.
本研究で開発したGARPOSはオープンソースソフトウェアとして公開している(https://doi.org/10.5281/zenodo.3992688).
既存のGNSS-A解析手法と比較した際のGARPOSの最大の特徴は,海底局アレイ上の海域を広く移動しながら観測を行う移動型GNSS-A観測のデータから,海洋音速場の空間的な傾斜構造とその変化を,海底局位置と同時に推定できる点にある.初期の解析手法であるFujita et al. (2006, EPS) や Ikuta et al. (2008, JGR) のアルゴリズムでは,船が移動することによる音速場の位置変化も,見かけの時間変化として推定していた.その後,2010年代になると,海洋のより深部における傾斜構造も誤差因として注目されるようになった.例えば,Yasuda et al. (2017, GRL) や Honsho et al. (2019, JGR) が所与の深さまでの一次元傾斜を推定するモデル(一次傾斜モデル)を構築している.また,Yokota et al. (2019, MGR) は,傾斜を仮定しない従来の推定結果の残差をさらに詳細に解析することで,個々の海底局位置に依存した音線の違いによる音速変化を抽出する手法を開発した.それに対し,提案手法では,具体的な傾斜構造をあらかじめモデル化することなく,あくまで音線の両端位置と時刻の関数として取り扱い,その摂動場を海底局位置と同時に推定する.提案したモデルは,既存の一次元傾斜モデルをその特殊な例として包含しており,より複雑な場も推定することができる.
ただし,このような複雑な音速場の同時抽出は,データに対する過剰適合を容易に引き起こす.そこで,提案手法では,データ誤差の分散共分散の非対角成分を導入することで,時空間的に近い音線を取るデータの相関が高くなるという仮定を表現した.その相関長はハイパーパラメータとして制御し,音速摂動場の時間変化の滑らかさ等を制御する他のハイパーパラメータも含め,適切なモデルをABIC(赤池ベイズ情報量基準; Akaike, 1980)を最小化するように選択するスキームとした.これにより,過剰適合を抑制することに成功し,時間的になめらかに変動する音速摂動場を得ることができた.
海底測位解については,実際のGNSS-A観測データを用いた解析から,既存の手法(Yokota et al., 2019, MGR)と同等の安定性で解を得られることを確認した.さらに,ブイ等を用いて定点で音響観測をする構成のデータについても,分解能がないために音速場の推定はできないものの,GARPOSを用いて適切に解析できることも確認した.
本研究で開発したGARPOSはオープンソースソフトウェアとして公開している(https://doi.org/10.5281/zenodo.3992688).