日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 31th)

Regular session » S03. Crustal deformation, GNSS, and gravity

S03P

Sat. Oct 31, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S03P-10] Effect of sound speed profile on GNSS-A seafloor positioning

〇Tadashi Ishikawa1, Shun-ichi Watanabe1, Yusuke Yokota2, Yuto Nakamura1 (1.Hydrographic and Oceanographic Department, Japan Coast Guard, 2.Institute of Industrial Science, The University of Tokyo)

GNSS-A海底地殻変動観測では、海中音速度の擾乱が測位精度に大きな影響を与える。センチメートルレベルの測位のためには、音線の通った場所・時間における音速を正確に与える必要があるが、時間・空間で複雑に変化する海中の音速場を要求精度内で計測することは事実上不可能である。一方で、計測された音波の往復走時には、距離だけではなくその途中経路の音速場の情報も含まれているため、解析を工夫することで、音速場の情報を取り出すことが可能となる。

時間・空間の4次元で変化する音速場に対する音線計算は複雑で計算コストも多大になるため、現在の解析では、4次元の変動は基準となる水平成層の音速プロファイルに対する補正項として表現し、音線はSnellの法則によって2次元面内で計算している。インバージョン解析では、補正項を時間・空間でなめらかな関数であるとした先験情報のもとでベイズ的に推定することによって、過適合を防ぎつつ適当な音速場モデルが得られる(Watanabe et al., submitted)。推定された補正項が十分に小さいときは、音速場の時間・空間変動を基準プロファイルからの摂動として近似的に表現できていると解釈される。一方で、方程式系としては補正項の大きさに制限はなく、補正項が大きくなる場合も許される。そうした場合は基準プロファイルの設定が適切でないと想定されるが、結果の解釈は必ずしも明らかではない。また、プロファイル自体の変動は考慮していない。

基準プロファイルはCTD等による水温・塩分の実観測から求めた音速値を基に設定しているが、時間・空間的に密な観測は難しく、また水深2,000m以深については、過去の統計値を外挿するなど、必ずしも正確なプロファイルを反映しているとは言えない。渡邉・内田(2016、海洋情報部研究報告)では、各観測点における過去の水温・塩分観測データから、水温・塩分構造の安定性を評価している。そこでは、1,200m以深では1σで0.2℃程度という測定機器の精度程度に収まる安定性を見せている一方で、800m以浅では海域によって複雑な変化が顕れることがあることが確認された。

本観測における音波の射出角では、海中における音線の屈折が小さくほぼ直線で進むため、こうしたプロファイル形状の違いが、特に水平位置の測位に対して、大きな影響を与えることがないと期待される。そのため、その影響の定量的な評価はこれまで十分に検討されてこなかった。しかしながら、近年南海トラフ浅部のSSEによる非定常変動や、日本海溝における東北地方太平洋沖地震の余効変動における鉛直変動の重要性など、さらなる精度の向上が求められているなかで、改めてその影響を評価する必要がある。また、その影響の多寡によっては、現在の音速・塩分観測の頻度等の観測計画の再設計も必要となることが想定される。本講演では、プロファイル形状が測位結果に与える影響について定量的に評価した結果について議論する。