日本地震学会2020年度秋季大会

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C会場

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[S04]AM-1

2020年10月30日(金) 10:00 〜 10:15 C会場

座長:利根川 貴志(海洋研究開発機構)

10:00 〜 10:15

[S04-01] 3次元的形状を持つプレートの定常沈み込みによる島弧変形の数値シミュレーション:海溝軸の屈曲による効果

〇森 祐太朗1、深畑 幸俊2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.京都大学防災研究所)

島弧海溝系は、島弧で高く海溝で低い重力異常および地形で特徴づけられる。このような特徴は、沈み込み帯において例外なく観測されるが、その変形の物理的メカニズムは未解明の問題として残されている。
Fukahata and Matsu’ura (2016)は、プレートの定常沈み込みによって引き起こされる島弧リソスフェアの変形を弾性-粘弾性2層構造における変位の食い違い理論に基づいて理論的に計算し、島弧-海溝系の2次元的な変形メカニズムをリソスフェアの回転運動と重力の組み合わせで説明した。
しかし、実際の沈み込み帯における島弧-海溝系の形成過程においては、沈み込む海洋プレートの3次元的な形状による効果も重要と考えられる。例えば、豊後水道や日本海溝と千島海溝の接合部(津軽海峡沖)など、海溝軸が屈曲している場所で屈曲部付近に大きな負のフリーエア重力異常が観測される(Sandwell and Smith, 1997)。この効果は数値モデルにより再現されている(Hashimoto et.al., 2004, 2008)が、重力異常が生じる物理的メカニズムは説明されていない。

本研究では、変位の食い違い理論(Fukahata and Matsu’ura, 2005, 2006)に基づいて定常沈み込みによる島弧リソスフェアの変形を計算する3次元数値モデルを実装した。このモデルを用いて、走向の異なる2本の直線的な海溝軸がなめらかに繋がる形状を持つプレート境界における定常沈み込みによって引き起こされる島弧リソスフェアの変形を計算した。ここで、2本の海溝軸の交わる角度を20度から80度まで変化させてその影響を調べた。

数値計算の結果、いずれの角度においても海溝軸の屈曲部付近に大きな沈降が生じることが再現された。この結果は、実際の沈み込み帯において観測される重力異常と調和的である。また、海溝軸の屈曲する角度が大きくなるほど沈降の空間スケール及び沈降量が大きくなることが分かった。
このような沈降のパターンは、水平方向の運動に基づいて以下のように合理的に説明される。2本の海溝軸のそれぞれに対し、海洋プレートはななめ沈み込みをする。そのななめ沈み込みの横ずれ成分の方向は、海洋プレートから見て海溝軸の屈曲部に対し右側で右横ずれ、左側で左横ずれとなる。これにより、島弧リソスフェアは屈曲部付近で左右に開く方向に運動をする。このような水平方向の運動に伴って海溝軸の屈曲部付近において質量が不足した結果、島弧リソスフェアで大きな沈降が生じたと考えられる。この考えは、2本の海溝軸の交わる角度が大きくなるほど横ずれ成分が大きくなり、屈曲部周辺の沈降量が大きくなることとも調和的である。