13:45 〜 14:00
[S06-04] 日本海と沿岸の震源断層モデル
とくに2011年東北地方太平洋沖地震に伴う津波災害以降、日本海沿岸での津波災害についても着目されるようになった。どの程度の規模の津波が発生するのかという点については、資料の不足から不明な点が多く残されていた。2013年から開始された文部科学省の「日本海地震・津波調査プロジェクト」では、反射法地震探査を基軸とした地殻構造探査により、波源・震源断層モデルを構築し、津波・強震動を評価するという方法で検討を重ねてきた。ここでは、8カ年のプロジェクトによって得られた震源断層の矩形モデルと、それらの地殻構造上の特徴について述べる。
反射法地震探査データについては、海洋研究開発機構の長大ストリーマーと大容量エアガンにより取得し、沿岸については地震研が二船式を交えて、2-4 kmのストリーマや1950 cu.inchのエアガンにより取得した。また、海陸統合測線として海底地震計と陸上の受振システムを展開し、エアガン・バイブロサイスの共通受振を行った。こうして得られた速度構造のデータは、石油公団などの既存の反射法地震探査データと合わせて、地殻・地質構造を理解する上で重要な資料となった。
震源断層の形状は、日本海形成時のテクトニクスと大きな関連を有している。日本海形成時に海洋地殻が形成された日本海盆と大和海盆、そして大陸地殻内のリフト帯の存在が弾性波速度構造の点から明らかになったことは大きな成果である。大陸地殻の伸展によるネッキングと海洋地殻を構成する苦鉄質岩の上昇により、大陸地殻との境界部には、リフトの外側に傾斜した緩傾斜の境界面が形成される。この面がその後の短縮変形場で逆断層となり、大規模な震源断層となる。1983年日本海中部地震はこうした地震の例である(No et al., 2014,EPSL)。日本海の拡大は、複数のリフト軸の活動によって達成され、とくに北日本の日本海側では秋田-山形堆積盆地や新潟-北部フォッサ堆積盆地、富山トラフ(Ishiyama et al., 2017, Tectonophys.)などにリフト構造が分布する。北日本では関東平野北西や鬼怒川低地帯など、分布が広範である。これらのリフト軸は帯状の周辺よりも高いP波速度を示す中・下部地殻を構成し、また地殻上部では厚い堆積層の分布により全体としては大陸地殻の薄化を示す。リフト軸と大陸地殻の境界には物質境界に起源をもつ低角度の震源断層が形成され、2007年中越沖地震はこうした地震の例である。また、大陸地殻内のリフト帯では地殻強度の低下により、褶曲断層帯が形成されている。リフト帯の縁辺以外の通常の伸展された大陸地殻部では、ハーフグラーベンが普遍的に形成され、多くの震源断層は中角度の逆断層となっている。日本海東縁-北日本の日本海沿岸では、反時計回りの回転をともなう日本海の拡大により、リフト期に形成された正断層群が、その後大きな横ずれ成分を示さない逆断層となり、断層のセグメントは伸張変形時の横断断層によって規制されている。
西南日本沖の日本海南部では、西南日本弧の時計回りの回転にともなって広く伸展された大陸地殻が分布し、西南日本弧と平行な正断層群が形成された。東北日本と大きく異なるのは、南海トラフでの熱い四国海盆の沈み込みが開始する6Ma程度まで、強い南北方向からの短縮変形を受けたことである。6Ma以降もNNW-SSE方向の圧縮応力は継続し、ほぼ垂直な同方向の断層を生み出した。その後、1Ma以降はフィリピン海プレートの運動方向の変化により、西南日本弧と平行な断層群は横ずれ断層として再活動しているが、日本海東縁に比べ再活動している断層の数は圧倒的に少ない。
震源断層の矩形モデルの構築に当たっては、音波探査などによって確認されている海底活断層の情報を重視し、その他、海底地形のパターンやより深部の情報により伏在断層を抽出した。断層の下限は、基本的にはHi-netなどの観測網により求められD90に従ったが(松原ほか, 2020地震学会)、海域部分では観測網が未整備であるため、陸域の自然地震トモグラフィにもとづく推定構成岩石のレオロジーも考慮して推定した。大陸地殻内のリフトでは伸展された大陸地殻部分に比べ、苦鉄質岩が迸入した領域ではD90が深く、こうした値を断層モデルにも反映させている。また断層のすべり角については、断層の姿勢をもとに、Terakawa & Matsu’ura (2010)の応力テンソルから求めている。とくに日本海南部では過去に応力場が大きく転換したたために、すべり角の扱いが重要である。これらの震源断層モデルは、津波・強震動予測のみならず、測地データに基づく広域的な上盤プレートの三次元モデルでの応力状態の予測と合わせて、上盤プレート内地震の発生予測についても貢献するものである。
反射法地震探査データについては、海洋研究開発機構の長大ストリーマーと大容量エアガンにより取得し、沿岸については地震研が二船式を交えて、2-4 kmのストリーマや1950 cu.inchのエアガンにより取得した。また、海陸統合測線として海底地震計と陸上の受振システムを展開し、エアガン・バイブロサイスの共通受振を行った。こうして得られた速度構造のデータは、石油公団などの既存の反射法地震探査データと合わせて、地殻・地質構造を理解する上で重要な資料となった。
震源断層の形状は、日本海形成時のテクトニクスと大きな関連を有している。日本海形成時に海洋地殻が形成された日本海盆と大和海盆、そして大陸地殻内のリフト帯の存在が弾性波速度構造の点から明らかになったことは大きな成果である。大陸地殻の伸展によるネッキングと海洋地殻を構成する苦鉄質岩の上昇により、大陸地殻との境界部には、リフトの外側に傾斜した緩傾斜の境界面が形成される。この面がその後の短縮変形場で逆断層となり、大規模な震源断層となる。1983年日本海中部地震はこうした地震の例である(No et al., 2014,EPSL)。日本海の拡大は、複数のリフト軸の活動によって達成され、とくに北日本の日本海側では秋田-山形堆積盆地や新潟-北部フォッサ堆積盆地、富山トラフ(Ishiyama et al., 2017, Tectonophys.)などにリフト構造が分布する。北日本では関東平野北西や鬼怒川低地帯など、分布が広範である。これらのリフト軸は帯状の周辺よりも高いP波速度を示す中・下部地殻を構成し、また地殻上部では厚い堆積層の分布により全体としては大陸地殻の薄化を示す。リフト軸と大陸地殻の境界には物質境界に起源をもつ低角度の震源断層が形成され、2007年中越沖地震はこうした地震の例である。また、大陸地殻内のリフト帯では地殻強度の低下により、褶曲断層帯が形成されている。リフト帯の縁辺以外の通常の伸展された大陸地殻部では、ハーフグラーベンが普遍的に形成され、多くの震源断層は中角度の逆断層となっている。日本海東縁-北日本の日本海沿岸では、反時計回りの回転をともなう日本海の拡大により、リフト期に形成された正断層群が、その後大きな横ずれ成分を示さない逆断層となり、断層のセグメントは伸張変形時の横断断層によって規制されている。
西南日本沖の日本海南部では、西南日本弧の時計回りの回転にともなって広く伸展された大陸地殻が分布し、西南日本弧と平行な正断層群が形成された。東北日本と大きく異なるのは、南海トラフでの熱い四国海盆の沈み込みが開始する6Ma程度まで、強い南北方向からの短縮変形を受けたことである。6Ma以降もNNW-SSE方向の圧縮応力は継続し、ほぼ垂直な同方向の断層を生み出した。その後、1Ma以降はフィリピン海プレートの運動方向の変化により、西南日本弧と平行な断層群は横ずれ断層として再活動しているが、日本海東縁に比べ再活動している断層の数は圧倒的に少ない。
震源断層の矩形モデルの構築に当たっては、音波探査などによって確認されている海底活断層の情報を重視し、その他、海底地形のパターンやより深部の情報により伏在断層を抽出した。断層の下限は、基本的にはHi-netなどの観測網により求められD90に従ったが(松原ほか, 2020地震学会)、海域部分では観測網が未整備であるため、陸域の自然地震トモグラフィにもとづく推定構成岩石のレオロジーも考慮して推定した。大陸地殻内のリフトでは伸展された大陸地殻部分に比べ、苦鉄質岩が迸入した領域ではD90が深く、こうした値を断層モデルにも反映させている。また断層のすべり角については、断層の姿勢をもとに、Terakawa & Matsu’ura (2010)の応力テンソルから求めている。とくに日本海南部では過去に応力場が大きく転換したたために、すべり角の扱いが重要である。これらの震源断層モデルは、津波・強震動予測のみならず、測地データに基づく広域的な上盤プレートの三次元モデルでの応力状態の予測と合わせて、上盤プレート内地震の発生予測についても貢献するものである。