3:00 PM - 3:15 PM
[S06-08] Receiver function imaging of the Philippine Sea plate subducting beneath Shikoku (3)
1.はじめに
南海トラフ域で発生する巨大地震について、震源域や強震動生成域の広がりを的確に推定し、地震規模や強震動の予測の確度を上げるためには、震源域となるフィリピン海スラブ周辺域や巨大地震から発せられた地震波の伝播経路にあたる領域の構造を高精度に推定することが必要である。
我々は、リニアアレイ観測、レシーバ関数解析および地震波走時トモグラフィ解析により、紀伊半島、南九州および四国の地下構造を高精度に推定することを試みてきた。
今回は、前回に引き続き、四国でのレシーバ関数解析の結果について報告する。
2.リニアアレイ観測
四国では、徳島県海陽町と鳥取県米子市を結ぶ海陽-米子測線の四国側(海陽-綾川区間)と徳島市と愛媛県西予市を結ぶ徳島-西予測線でリニアアレイ観測を行った。いずれも測線近傍の定常観測点も含めて、観測点間隔が約5 kmになるように臨時観測点を配置した。
海陽-綾川区間では2014年12月から2017年2月まで、徳島-西予測線の東側(神山-大豊区間)では2015年12月から2018年12月まで、徳島-西予測線の西側(いの-西予区間)では2017年3月から2019年1月まで、いずれも7点の臨時観測点を設置した。
各臨時観測点では、固有周期1秒の高感度地震計(L-4-3D、Sercel社製)の地動速度出力をデータロガー(LS-7000XT、白山工業製、100 HzサンプリングまたはEDR-X7000、近計システム製、250 Hzサンプリング)に連続収録した。データロガーは自動車用バッテリーで駆動し、太陽電池で充電するオフライン観測を行った。
2020年4月に高知県土佐清水市大岐から四万十市西土佐奥屋内までの土佐清水―西土佐奥屋内区間に7点の臨時観測点を設置した。2022年3月まで2年間観測を行う予定である。
3.レシーバ関数解析
海陽-米子測線と徳島―西予測線の観測点で記録された遠地地震波形を用いてレシーバ関数を求めた。レシーバ関数とは、観測点下のS波速度不連続面で生成されるPS変換波を抽出した波形である(澁谷・他, 2009)。
さらに、気象庁の地震波速度構造JMA2001(上野・他, 2002)を用いて、レシーバ関数の時間軸を深さ変換し、多数の観測点で多数の地震に対して得られたレシーバ関数の振幅を共通の変換点上で重合することにより、S波速度不連続面のイメージを求めた。
海陽-米子測線でのレシーバ関数イメージにおいては、高速度層の上面と考えられるフィリピン海スラブ内の海洋モホ面が、海陽町付近の深さ30 km弱から岡山県真庭市の北房観測点(N.HKBH)付近の深さ45 kmまで明瞭である。その6~8 km上方には、低速度である海洋地殻の上面、すなわちフィリピン海スラブの上面も明瞭に見られる。この結果から四国東部下のフィリピン海プレートは、6°程度の傾斜角で沈み込んでいることが分かった。これに対して、大陸モホ面は、やや不明瞭ではあるが、島根県安来市の伯太観測点(N.HKTH)付近の深さ35 kmから海陽町付近の深さ15 kmまでフィリピン海プレートの上方をせり上がるように分布していることが示唆された。
徳島-西予測線でも海洋モホ面は明瞭であり、徳島市付近では深さ33 kmに、西予市付近では深さ44 kmに見られる。高知県仁淀川町の池川観測点(N.IKKH)~愛媛県久万高原町の柳谷観測点(N.YNDH)では深さ30 kmまで浅くなっている。フィリピン海スラブの上面に対応する低速度層上面は、海洋モホ面の6~8 km上方に見られるが、高知県いの町の吾北観測点(N.GHKH)を中心として、高知県本山町の本山観測点(N.MTYH)から池川観測点までの区間には、フィリピン海スラブの上面のさらに上方により明瞭な低速度層上面が見られる。大陸モホ面は、不明瞭ながらも、20 km弱の深さに見られる。
謝辞
防災科学技術研究所、気象庁、産業技術研究所、高知大学、京都大学の定常観測点の地震データを使用しました。
南海トラフ域で発生する巨大地震について、震源域や強震動生成域の広がりを的確に推定し、地震規模や強震動の予測の確度を上げるためには、震源域となるフィリピン海スラブ周辺域や巨大地震から発せられた地震波の伝播経路にあたる領域の構造を高精度に推定することが必要である。
我々は、リニアアレイ観測、レシーバ関数解析および地震波走時トモグラフィ解析により、紀伊半島、南九州および四国の地下構造を高精度に推定することを試みてきた。
今回は、前回に引き続き、四国でのレシーバ関数解析の結果について報告する。
2.リニアアレイ観測
四国では、徳島県海陽町と鳥取県米子市を結ぶ海陽-米子測線の四国側(海陽-綾川区間)と徳島市と愛媛県西予市を結ぶ徳島-西予測線でリニアアレイ観測を行った。いずれも測線近傍の定常観測点も含めて、観測点間隔が約5 kmになるように臨時観測点を配置した。
海陽-綾川区間では2014年12月から2017年2月まで、徳島-西予測線の東側(神山-大豊区間)では2015年12月から2018年12月まで、徳島-西予測線の西側(いの-西予区間)では2017年3月から2019年1月まで、いずれも7点の臨時観測点を設置した。
各臨時観測点では、固有周期1秒の高感度地震計(L-4-3D、Sercel社製)の地動速度出力をデータロガー(LS-7000XT、白山工業製、100 HzサンプリングまたはEDR-X7000、近計システム製、250 Hzサンプリング)に連続収録した。データロガーは自動車用バッテリーで駆動し、太陽電池で充電するオフライン観測を行った。
2020年4月に高知県土佐清水市大岐から四万十市西土佐奥屋内までの土佐清水―西土佐奥屋内区間に7点の臨時観測点を設置した。2022年3月まで2年間観測を行う予定である。
3.レシーバ関数解析
海陽-米子測線と徳島―西予測線の観測点で記録された遠地地震波形を用いてレシーバ関数を求めた。レシーバ関数とは、観測点下のS波速度不連続面で生成されるPS変換波を抽出した波形である(澁谷・他, 2009)。
さらに、気象庁の地震波速度構造JMA2001(上野・他, 2002)を用いて、レシーバ関数の時間軸を深さ変換し、多数の観測点で多数の地震に対して得られたレシーバ関数の振幅を共通の変換点上で重合することにより、S波速度不連続面のイメージを求めた。
海陽-米子測線でのレシーバ関数イメージにおいては、高速度層の上面と考えられるフィリピン海スラブ内の海洋モホ面が、海陽町付近の深さ30 km弱から岡山県真庭市の北房観測点(N.HKBH)付近の深さ45 kmまで明瞭である。その6~8 km上方には、低速度である海洋地殻の上面、すなわちフィリピン海スラブの上面も明瞭に見られる。この結果から四国東部下のフィリピン海プレートは、6°程度の傾斜角で沈み込んでいることが分かった。これに対して、大陸モホ面は、やや不明瞭ではあるが、島根県安来市の伯太観測点(N.HKTH)付近の深さ35 kmから海陽町付近の深さ15 kmまでフィリピン海プレートの上方をせり上がるように分布していることが示唆された。
徳島-西予測線でも海洋モホ面は明瞭であり、徳島市付近では深さ33 kmに、西予市付近では深さ44 kmに見られる。高知県仁淀川町の池川観測点(N.IKKH)~愛媛県久万高原町の柳谷観測点(N.YNDH)では深さ30 kmまで浅くなっている。フィリピン海スラブの上面に対応する低速度層上面は、海洋モホ面の6~8 km上方に見られるが、高知県いの町の吾北観測点(N.GHKH)を中心として、高知県本山町の本山観測点(N.MTYH)から池川観測点までの区間には、フィリピン海スラブの上面のさらに上方により明瞭な低速度層上面が見られる。大陸モホ面は、不明瞭ながらも、20 km弱の深さに見られる。
謝辞
防災科学技術研究所、気象庁、産業技術研究所、高知大学、京都大学の定常観測点の地震データを使用しました。