日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

学生優秀発表賞(ポスター発表)審査セッション

学生優秀発表賞(ポスター発表)審査セッション » C会場(S06, S09)

[SPA]PM-3

2020年10月29日(木) 16:00 〜 17:00 C会場

座長:吉田 康宏(気象大学校)

16:10 〜 16:20

[S06P-04] 地震波干渉法により抽出したレイリー波(Scholte waves)のV/Hを用いたS-net浅部構造の推定

*福島 駿1、蓬田 清1 (1. 北海道大学理学院)

近年,DONETやS-netなどの海底地震計技術の発達により,地震波干渉法による高解像度な浅部,地震波速度構造推定が可能となりつつある。また,沈み込み帯における,プレートの折り曲がりにより生じるクラックや間隙水の移動に伴う浅部速度構造と異方性構造の時空間変化を推定することが可能になりつつある.表面波の波形記録から地球表層の速度構造を推定する際,表面波が伝搬する2点間の位相速度や群速度の分散曲線がこれまで用いられてきた.これとは別にレイリー波の鉛直・水平振幅の比(V/H)からも観測点の近くでの地震波速度構造を推定できることが知られている(e.g., Lin et al., 2014).
 本研究では,まず海水が存在する場合のV/Hの感度カーネルを定式化し,いくつかのモデルに対して求めた.次に,S-netの観測点はケーブルに固定されているため,観測された,3成分波形は上下・東西・南北成分(E, N, U)とは一致しない.そこで,Takagi et al., (2019) の手法により,元の3成分波形からE, N, U成分波形へと補正した.このようなデータに対して,2017年1月から3月までの3ヶ月間において,S-netのサブアレイS3内の微動記録に対して相互相関関数を計算し表面を抽出した.このための処理として,100hzから4hzにダウンサンプリングを行い,2秒から40秒のバンドパスフィルターを適用し,さらに1bit 化を行なった(e.g., Bensen et al., 2007).一例を図1に示すが,このように,群速度 0.2-0.3 km/sで伝搬する表面波の抽出に成功した.この波は堆積層中のS-波速度が海水中のP波速度(1.5km/s)よりも遅い時,堆積層と海水の境界を伝搬するScholte waves に対応する.
抽出した表面波に対して,安定したV/H値を得るために,抽出した表面波に対して,周期4秒から20秒までの各周期ごとにgaussian filterを適用し,transverse方向とヒルベルト変換を行なったradilal方向のzero-lag cross-correlations coefficient を計算した(e.g., Tanimoto and Rivera., 2007).その値が0.7以上の波形に対して,V/H値とそれらの中央値を各周期ごとに計算した.その結果,周期5.5秒から7.5秒において,堆積層中の低速度層が存在するにも関わらず,V/Hの水平動に比べて上下動が卓越していることを明らかになった(図2).これは,観測点の上側にP波だけが存在する層(海水)があると上下動成分だけが選択的に大きくなるという,感度カーネルでの計算結果とも調和的である.
最後に,V/Hデータの中央値に対して線形インバージョンを行い,浅部速度構造を求めた.海底から深さ3kmまでのS波速度の構造決定を図3に示す.推定した海底面表層のS波速度は0.65 km/sであり,Scholte wavesが伝搬する条件の低速度層が存在が確認された.
 今後,さらに多くの観測点や異なる観測期間で同様な計算を行えば,堆積層中の地震波速度の時空間変動が求められると考える.