日本地震学会2020年度秋季大会

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C会場

一般セッション » S07. 地球及び惑星の内部構造と物性

[S07]AM-2

2020年10月30日(金) 10:30 〜 11:00 C会場

座長:大林 政行(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

10:30 〜 10:45

[S07-01] 千島−本州スラブ海側のマントル不連続面

〇大林 政行1、吉光 淳子1、深尾 良夫1 (1.海洋研究開発機構)

本州スラブの下の410-km分連続面の直上には低速度異常があり,高温の異常に起因することが示唆されている(e.g. Obayashi et al, 2006; Bagley & Revenaugh, 2008). しかしそこで示された低速度異常域は本州スラブおよび伊豆−小笠原スラブの北端付近と限定的であり、その広がりは未だ明らかでない。我々はJpGU-AGU joint meeting 2020において千島海溝付近で起きた11地震を解析し、南千島から本州にかけても2−3%の低速度異常が410-km不連続面の直上にあるが、660-km不連続面付近では顕著な異常が見られないことを示した。そこでは11地震の自乗エンベロープ波形を震源深度が120kmとなるように補正後スタックした波形を用い、スタック波形の走時を説明する1次元速度構造をフォワードモデルリングによって示した。

今回、Obayashi et al.(2006)で示された1次元速度モデルM200M(200℃高温及び1%未満のメルトに起因する410-km不連続面直上の低速度異常および410-km不連続面の沈降)に基づく波形を計算し、スタック波形との比較を行った(図)。このモデルでは深さ310〜460kmでM200Mを採用し、他の深さでは解析に使用したすべての地震−観測点間波線に沿った3次元速度構造(GAP_P4;obayashi et al., 2013)の平均で1次元構造を求めている。図が示すようにモデルM200Mによる合成波形は410-km 不連続面に関連するトリプリケーション波形を非常に再現している.従って沈み込むスラブの下の410-km不連続面付近の異常は本州スラブに限られたものではなく千島から本州にかけても見られる一般的な現象と考えられる。ただし、410km不連続面より浅い最深点を持つ初動波形の振幅は観測に比べて非常に小さく、トモグラフィーの平均では説明できず、スラブに対応する高速異常は改良しなくてはならないことを示唆している。



図:11個の地震をスタックした自乗エンベロープ波形(青色で塗りつぶされたもの)とM200M1次元速度構造をもとに合成された波形(マゼンタ)。