日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S07. 地球及び惑星の内部構造と物性

[S07]AM-2

2020年10月30日(金) 10:30 〜 11:00 C会場

座長:大林 政行(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

10:45 〜 11:00

[S07-02] 西太平洋の古い海洋底下の3次元上部マントルS波速度構造

〇一瀬 建日1、川勝 均1、塩原 肇1、竹内 希1、杉岡 裕子2、Kim YoungHee3、歌田 久司1、Lee Sang-Mook3、吉澤 和範4 (1.東京大学地震研究所、2.神戸大学、3.ソウル大学、4.北海道大学大学院理学研究院)

多国間連携による海底地球物理観測イニシアティブ「太平洋アレイ」計画は,太平洋の年代の異なる様々な海域で1〜2年のアレイ観測を展開することで,10〜15年程度の期間で太平洋全体をカバーする「アレイによるアレイ」観測を実現し,海洋リソスフェア・アセノスフェアの理解を統合的に深化させることを構想している.
 この太平洋アレイの第1期アレイとして,2018年秋から2019年秋にかけ,グアム東方沖の深海盆(海洋底年代約1.7億年)において,海底地震電磁気観測(Oldest-1アレイ)を日韓合同で実施した.このアレイは,太平洋最古の海洋底に位置しており,プレート成長の端成分を実証的に制約すると共に,太平洋プレート生成初期のプレート成長を明らかにすることを目的としている.観測は,日本側が観測機器(広帯域海底地震計(BBOBS)12台,海底電位差磁力計7台)を供出し,機器の設置・回収は韓国の研究船を使用して実施された.この観測では従来のBBOBSに微差圧計(DPG)を追加し,さらに錘の足の長さを従来の1mから2mに延長する改良を加えたものを使用した.BBOBS 12台中11台は良好な記録を取得し,1台はDPG記録のみ取得であった.傾斜ノイズ・コンプライアンスノイズ除去を施した鉛直成分を解析に用いた.
 本研究は,表面波インバージョン手法を用いた上部マントルS波速度構造から,西太平洋の古い海洋底(1.2-1.8億年)の特徴を明らかにすることを目的としている.
 Oldest-1アレイで得られた地震波形記録を用い,4次の高次モードまでの表面波位相速度を測定し,既存の測定データ(Isse et al., 2019, EPSL等)に追加し,鉛直異方性を考慮した太平洋全体の3次元上部マントルS波速度構造を求めた.
 得られた構造は以前のモデル(Isse et al., 2019)と大局的には似ているが,西太平洋域に注目するとOldest-1アレイ直下では以前のモデルよりリソスフェアが高速度かつ厚いという違いが得られた.海洋底年代毎の上部マントルの速度構造を求めたところ,1.2-1.4億年までは海洋底が古くなるほど高速度であるが,1.4億年より古い海洋底では年代依存は不明瞭であった.