9:15 AM - 9:30 AM
[S08-06] Uncertainty estimation for the thermal structure of subduction zones based on surface heat flow measurements
沈み込み帯における多様な地震活動を議論する際の最も基本的な情報の1つは、温度である。そして温度構造を推定する手法の1つとして、物理モデリングが良く用いられる。この手法では多くの場合、フォワード計算を繰り返し行うことで観測データからの制約を満たすようなモデルパラメータの組み合わせ(さらにそこから得られる温度構造)を求めるが、(1)モデルパラメータの不確かさを評価することが難しい、(2)観測データをより良く説明するモデルパラメータの組み合わせが存在する可能性がある、(3)観測データの誤差を考慮していない、といった問題点がある。本発表ではこれらの問題に取り組むための枠組みとして、東北地方とカスカディアの地殻熱流量データを用いてベイズの定理に基づき5つのモデルパラメータを同時推定する例を紹介する。
熱流量の予測は2次元定常状態における質量保存則、運動量保存則、エネルギー保存則に基づく方程式を解くことで行う。推定するモデルパラメータは、(1)スラブとその直上のマントルの運動がデカップルする深さ(Ddec)、(2)大陸上部地殻内の放射性元素の崩壊による発熱量(HUCC)、(3)沈み込むプレート境界における有効摩擦係数(μ’)、(4, 5)マントルウェッジ内の粘性率の温度依存性と絶対値をそれぞれ支配するパラメータ、である。マルコフ連鎖モンテカルロ法の1つであるメトロポリス法を用いて、事後確率分布に従うようなモデルパラメータのサンプリングを約3万回行う。
そのようにして得られたモデルパラメータの集合は多くの情報を持つ。例えば東北地方ではDdecは80±10 km程度であり、これは先行研究によって報告された値と合っている。また東北地方ではHUCCとμ’の間に強い負の相関関係があり、これは地殻熱流量データからだけではこの2種類のモデルパラメータを同時に推定することが難しいことを示唆している。さらに我々が物理モデリングによって予測した熱流量は観測データの平均よりも少し低い値となることが分かった。これは熱伝導率の不確かさを考慮して、観測データの誤差を一定値ではなく、データの値の15%と仮定したためである。
今回は地殻熱流量データのみに焦点を当てているが、ここで用いた手法を複数の種類の観測データに対して適用することで、温度構造をより高い信頼度(より小さな不確かさ)で決定することができる。そのようにして得られた温度構造を用いることで、地震活動に対する理解がさらに大きく進むと期待できる。
熱流量の予測は2次元定常状態における質量保存則、運動量保存則、エネルギー保存則に基づく方程式を解くことで行う。推定するモデルパラメータは、(1)スラブとその直上のマントルの運動がデカップルする深さ(Ddec)、(2)大陸上部地殻内の放射性元素の崩壊による発熱量(HUCC)、(3)沈み込むプレート境界における有効摩擦係数(μ’)、(4, 5)マントルウェッジ内の粘性率の温度依存性と絶対値をそれぞれ支配するパラメータ、である。マルコフ連鎖モンテカルロ法の1つであるメトロポリス法を用いて、事後確率分布に従うようなモデルパラメータのサンプリングを約3万回行う。
そのようにして得られたモデルパラメータの集合は多くの情報を持つ。例えば東北地方ではDdecは80±10 km程度であり、これは先行研究によって報告された値と合っている。また東北地方ではHUCCとμ’の間に強い負の相関関係があり、これは地殻熱流量データからだけではこの2種類のモデルパラメータを同時に推定することが難しいことを示唆している。さらに我々が物理モデリングによって予測した熱流量は観測データの平均よりも少し低い値となることが分かった。これは熱伝導率の不確かさを考慮して、観測データの誤差を一定値ではなく、データの値の15%と仮定したためである。
今回は地殻熱流量データのみに焦点を当てているが、ここで用いた手法を複数の種類の観測データに対して適用することで、温度構造をより高い信頼度(より小さな不確かさ)で決定することができる。そのようにして得られた温度構造を用いることで、地震活動に対する理解がさらに大きく進むと期待できる。