日本地震学会2020年度秋季大会

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Room C

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08]AM-2

Sat. Oct 31, 2020 10:30 AM - 11:45 AM ROOM C

chairperson:Ryosuke Ando(University of Tokyo), chairperson:Keisuke Ariyoshi(JAMSTEC)

11:30 AM - 11:45 AM

[S08-14] A hierarchical model of earthquake asperity

〇Yoshio Fukao1 (1.JAMSTEC)

1.序

従来の地震アスペリティモデルは、固着域の周囲に非地震性滑り域を想定し、周囲の非地震性滑りにより固着域で応力増加することをもって地震発生の原因とみなしてきた。このモデルは巨大地震の地域性や繰り返し地震の存在などを良く説明する。しかし一方で、地震の階層的な破壊成長や地震規模と発生頻度の間の統計的関係(GR則)などを一般的に説明することは困難だった。本報告では、周囲の非地震性滑りを想定しないアスペリティモデルを提案し、それが地震の階層的破壊成長やGR則を説明できることを示す。



2.モデル

上盤プレートと下盤プレートとの摩擦面は、大アスペリティとその周囲に点在する小アスペリティとで構成される(図1)。摩擦強度はアスペリティの大小に依らない。下盤プレートは剛体と考える。上盤プレートは、変形しない一様な上面と大小アスペリティで分割された下面とを繋ぐバネの集合体と考える。どのスケールで見ても大アスペリティを囲んで小アスペリティが点在するフラクタルモデルとしてSierpinski carpetを採用する(図3:白色は既に滑ったアスペリティ、青色は未だ滑ってないアスペリティ)。図3は上盤プレートの上面に一様な力を加えたときに起こる階層的な破壊成長を示す。1つの階層は中央の大アスペリティと周囲の小アスペリティとで構成される。どの階層の破壊も周囲の小アスペリティの1つが滑ることから始まる。周囲の小アスペリティが全て滑ると、中央の大アスペティに負荷が集中しここが滑る。この滑りは1つ上の階層では周囲の小アスペリティの1つが滑ったことに対応する。



3.モデルの定量化

1つのアスペリティがバネの力Fによって滑る確率をpo=po(F/Fo)とし、poは2次のWeibull分布に従うとする。但しFo=σo·Sσoはレファレンス摩擦強度、Sはアスペリティの面積)。図3において、(1,0)はどのアスペリティも滑っていない状態、(1,8)は周囲の全ての小アスペリティが滑った状態である。(1,0)では全てのアスペリティに均等にバネ力Fが働いている。(1,8)では全バネ力9Fが中央の大アスペリティに集中している。周囲8個の小アスペリティのうちn個以上が滑る確率をPn(F/Fo)として、P8(F/Fo)= po(F/Fo)が成立するとき(図2)アスペリティの滑りは階層的に発展する(図3)。等式が成立するのはF/Fo=0.90396, po =0.55831の場合である。



4.モデルからの帰結

(1)図3において第1階層の小アスペリティの面積をSoとする。第1階層では面積SSoのアスペリティ9個が滑る間にS9Soのアスペリティは1個滑る。第2階層においては面積S9Soのアスペリティ9個が滑る間にS92Soのアスペリティ1個が滑る。第3階層では面積S92Soのアスペリティ9個が滑る間にS93Soのアスペリティ1個が滑る。即ち面積がSよりも大きなアスペリティが滑る頻度N1/Sに比例する。これは地震のb値が1のGR則に相当する。

(2)同一階層において、周囲の複数の小アスペリティの滑りが時間的に接近して起こり中央の大アスペリティの滑りに繋がると、観測的には初期破壊と主破壊と認識される。初期破壊フェーズでは主破壊に近づくほど応力変化量(バネ力の変化量とアスペリティ面積との比)は増加する。主破壊の応力変化量は初期破壊フェーズの応力変化量よりも小さい(大アスペリティも小アスペリティもレファレンス摩擦強度は同じだが応力変化量は破壊過程に依存する)。



5.図の説明

第1図:アスペリティモデル:アスペリティが滑る確率はバネ力の大きさに依存する。破壊は周囲の小アスペリティの滑りで始まり、中心の大アスペリティに応力が集中することにより大アスペリティにも滑りが起こる。

第2図:周囲の8個の小アスペリティのうち個以上が滑る確率Pn(F/Fo)。但しF/Fo=0.90396で、このときP8(F/Fo)=po(F/Fo)= 0.55831。但し、poは1個のアスペリティが力F/Foの下で滑る確率。

第3図:階層的アスペリティ破壊。周囲の小アスペリティが全て滑ると、力が中央の大アスペリティに集中する。中央の大アスペリティの滑りは1つ上の階層においては周囲の小アスペリティ1個の滑りに相当する。



6.謝辞

このテーマを示唆して下さった金森博雄博士に感謝する。