日本地震学会2020年度秋季大会

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Room C

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08]PM-1

Sat. Oct 31, 2020 1:00 PM - 2:15 PM ROOM C

chairperson:Shiro Hirano(Ritsumeikan Univ.), chairperson:Takehito Suzuki(Aoyama Gakuin University)

1:00 PM - 1:15 PM

[S08-15] Dynamic Rupture Simulation on a Non-planer Fault : Pore Pressure, Stress Direction, Angle of Fault Bend and ISOtropic Component

〇Yuuki Kurihara1, Hiroyuki Noda2 (1.Kyoto University Graduate school of Science , 2.DPRI, Kyoto University)

近年、非火山性の地震に関して、モーメント解に等方(ISO)成分を多く持つ震源の存在が示唆されている。ISO成分は非弾性変形による体積変化を表し、断層面において顕著な開口が生じると高い割合を示す。例えばStierle et al.(2014)では、1999年に発生したイズミット地震の震源域において、ISO成分が15%を超える余震が捉えられたと報告されている。また、Hayashida et al.(2020)では、開口を仮定した断層破壊モデルを用いると、鳥取県西部地震の余震のうち、非DC成分の卓越したものについてうまく説明できると報告されている。このような観測例は、非火山性の地震であっても開口成分の変位を持ちうることを示唆している。本研究においては、ISO成分の卓越した破壊を発生させるために必要な条件について、混合Modeの2次元動的破壊シミュレーションを用いて調べた。

計算には2次元の境界積分方程式法を利用した。滑り速度(区分的に一定値を取る基底関数で離散化)から応力変化を求めるためにTada & Madariaga(2001)で示されている積分核を利用した。また、時間発展の手法にはNoda et al.(2020)で提案された予測子-修正子法を利用した。この計算手法の特色は、非平面断層を扱える点、また混合Modeでの安定的な計算が実現されたことにより、剪断方向だけでなく開口方向の変位を持つ破壊が扱える点である。

断層の形状は、平行な2枚の断層(L,R)が、角度Φで斜交した断層(C)によって繋がっている非平面断層を想定した。また、広域応力場を設定する際には、Andrews(1976)で定義されているS値に着目した。S値は、初期条件から破壊が生じるために必要な剪断応力の増加(μsσnini)と、破壊が生じたときの応力降下量(τinidσn)の比であり、この値が小さいほど破壊が進行しやすい。また、応力のスケールとして差応力を一定値とすると、S値の減少は間隙水圧の増加として解釈できる。このS値と、断層の斜交する角度(Φ)、Cに対する最大応力軸の角度(Ψ)の3つをそれぞれパラメータとしてパラメータスタディを行った。

仮定した断層上で破壊を発生させるため、破壊核として、中央の面に臨界クラックサイズで応力擾乱を与えた。応力擾乱パッチの内側ではせん断応力が周囲より高く設定されており、降伏応力を上回るため、このパッチから破壊が開始して、両方向に進展すると期待できる。しかしながら、一部のパラメータの組み合わせにおいて、応力擾乱パッチを与える前から、斜交した断層が破壊条件を満たしているケースがあった。このような「何もしなくても割れてしまう」断層は、天然では存在しえないと考え、ill-posedな条件設定として考察からは除外している。

パラメータスタディの結果、S値が小さいほど、すなわち間隙水圧が増加するほどISO成分が増える傾向がほぼすべてのケースで見られた。パラメータスタディに際してΨは15°から75°まで15°刻みに与えたが、最大応力軸の角度(Ψ)が低角なときは、いくら間隙水圧を上げてもISO成分が10%を超えない例が見られた。逆にΨを高角で与えたときはill-posedに分類される例が多かった。計算に用いた中で、最も高いISO成分を得られたパラメータはΨ=60°かつΨ=-Φで、S値が小さいときであった。このような結果から、ただ間隙水圧が上昇しさえすれば必ずISO成分を伴う破壊になるのではなく、応力の向きや断層の形状の影響も重要であると考えられる。

また、摩擦係数や応力擾乱パッチのサイズといった、上述のパラメータスタディでは定数として扱ってきたパラメータを変更したときの影響についても述べる。特に、ここまではμsμdとして設定していた動摩擦係数をμsdへ変更した場合 、ill-posedな条件となるパラメータ領域が格段に広がり、本来であれば高いISO成分を得られるはずのパラメータセットがill-posedとなってしまう場合が見られた。ISO成分の高い破壊の存在は、μsμdであることを示している可能性がある。