日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 31th)

Regular session » S08. Earthquake physics

S08P

Sat. Oct 31, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S08P-04] ICDP DSeis: Evaluation of Spatial Stress Change by Diametrical Core Diameter Analysis of M5.5 Aftershock Zone Core

〇Yoshihiro Mima1, Ryogo Tadokoro1, Shunsuke Yoshida1, Mitsuya Higashi1, Kensuke Sakaguchi1, Bennie Liebenberg, Siyanda Mngadi4, Yasuo Yabe2, Akio Funato3, Takatoshi Ito2, Raymond Durrheim4, Hiroshi Ogasawara1 (1.Ritsumeikan University, 2.Tohoku University, 3.Fukada Geological Institute, 4.University of the Witwatersrand)

地震発生場では,母岩や地震断層系の不均質が破壊の核形成・伝播・停止をコントロールすると考えられている。しかし、地震発生場に掘削を到達させ、十分な量のコア試料が回収された事例がなかったため、実際の地震発生場で何が起こっているかを詳細に議論できる機会がこれまでなかった。

 2014年、地下約2~3kmを採掘する南アフリカMoab Khotsong金鉱山の下で、左横ずれ型のM5.5の地震が発生した(Midzi et al. 2015)。この地震では、鉱山坑内の46台の地震計と地表の15台の強震計が、本震の破壊域と余震発生域が地下3~7kmに広がる様子を詳細に記録した。ICDP DSeis計画(2017-2019; Ogasawara et al. DeepMining 2019)は、この鉱山の地下2.9kmから、三本(Hole A, B, C)の総延長約1.6 kmのFull Core掘削に成功した。そして、この余震発生帯上縁部(マントルを起源とし変質したマフィックなシルとダイク;Vp > 約5.0~6.4 km/s)とその周囲の母岩(太古代の堆積変成岩;Witwatersrand Super Group; West Rand Group; Vp > 5.5 km/s)を回収することができた。 2017年に掘削されたHole A(817m)は、孔が曲がり、余震発生帯の上縁部よりも200~300下まで到達したが、余震発生帯との距離を約100mよりも縮めることができなかった。しかし掘削孔は安定していたので、コアのほぼ100%を採取することができた。2018年に掘削が始まったHole B(700m長)はM5.5断層上部と交差させることができた。そこで、Hole Bが交差した断層部の開始地点の手前から分岐してM5.5断層部を掘り抜くHole C(96m長)の掘削(核心部はトリプルチューブ)を行い、より多くの断層部のコアサンプルを手に入れることができた。

 Funato and Ito (2017)は,十数cm長のコアさえあれば,非破壊で短時間で応力を測定できる方法(Diametrical Core Deformation Analysis; 以下、DCDA法)を開発した。この方法では、以下のようにして応力を測定する。(1)ドリリング中にコアが母岩から切り出されて解放されたときに生じる、コア軸に直交する断面が弾性的に楕円変形したコアの直径の変化を測定する。(2)測定されたコアの最小直径と最大直径の値の差から歪を計算する。(3)弾性変形を仮定し、その岩石の剛性率(あるいはヤング率とポアソン比)からコア軸に直交する面内の差応力を推定する。船戸が所有するこの測定システムを用い、南アフリカにおいて、石田(2018修士論文)は、可能な限り多くのコア(186個)のDCDA応力測定を行った。当時測定できたのは,余震発生帯上縁部よりも大きな深度まで到達したが余震発生帯とは交差できなかったHole A(817m長;NQダブルチューブ)のコアであった。しかし,石田は、岩相によって残差の分散とその要因が異なる場合でも,統計的に統一した基準で測定結果を採用したり棄却したりする基準をつくることができた。また,Hole Aの軸に垂直な平面内の差応力の,空間変動を描き出すことに成功した。そして、intrusives(シルとダイクの交差部;湧水部,および,余震帯上縁部付近の深度の付近)に応力集中があるのを発見した。杉村(2020修士論文)は,Hole Aの応力集中が著しい深さのコアと、その後掘削され余震発生帯上縁部と交差したHole B(700m長;NQダブルチューブ)とそのSide track孔(Hole C; 96m長;核心区間はNQトリプルチューブ)のコアの計86個のDCDA応力測定を追加した。追加測定されたデータにより、石田の測定からM5.5余震発生帯の上縁部周辺の深さにおけるintrusivesで見つかった応力集中が異常値ではないことを確認できた。本研究では,漏れていた箇所のDCDA応力測定を追加した。Hole A, B, Cの核心部、総延長140mのコアが高知コアセンターに輸入され、MSCLやX線CTスキャン、XRDやXRF分析などによって、余震発生帯の断層構造と物質の詳細の解析が始まった(Ogasawara et al. 2020 JpGU; 横山 2020 修士論文)。

 本ポスターでは、これまでの先行研究の結果と本研究で2019年にHole A, B, Cのコアについて追加測定した137個のデータから、M5.5断層と交差するHole Bと交差しなかったHole Aの空間応力分布を示し、それぞれの違いや関連性を報告するとともに、Hole Bから分岐して断層部を掘削したHole Cのデータから得られた結果についても報告する。



謝辞 ICDP, JSPS (Core-to-Core; SA NRF bilateral), 災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画,高知コアセンター,立命館大学, AngloGold Ashanti, Harmony