日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S09. 地震活動とその物理

[S09]PM-1

2020年10月30日(金) 13:00 〜 14:15 B会場

座長:尾鼻 浩一郎(海洋研究開発機構)、座長:小木曽 仁(気象研究所)

14:00 〜 14:15

[S09-22] 10kHzサンプリングによるP波初動付近の波形相関を用いた前震活動の相対震源決定

〇野田 雄貴1、飯尾 能久2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.京都大学防災研究所)

長野県西部地域では1995年6月から10kHzサンプリングによる地震観測が行われている。観測点は1984年長野県西部地震の余震域の東部を中心に設置されており、この地域では1976年8月以来地震活動が活発である。またこの地域では、震源が浅く信号が大きい地震が多い、岩盤が均質で固く非弾性減衰が小さい、観測点の周囲が静かでノイズレベルが小さいといった特徴があり、非常に地震観測に適した環境が整っている。そのため多数の微小地震データが得られ、シンプルな波形が観測できる。また、2008年8月からは満点システムによる250Hzサンプリングの観測も行われている。

 この研究では本震およびその前震をマグニチュード、発震時の前後関係、震央距離および鉛直距離から時空間的に定義し、前震それぞれについて本震に対する相対震源を決定した。

 この研究で用いている波形データは10kHz速度波形の鉛直成分である。時空間的に定義した本震および前震活動の波形は、同じ観測点において、極性の違いはあってもP波初動の立ち上がりの数ミリ秒間の形状がよく似ていた。そこで本震とその前震から成るペアについて、ある観測点におけるP波初動付近の10ミリ秒程度の短いウインドウを用いて相互相関係数が最大になる時間差を求め、それをある観測点における2つの地震のP波到達時刻の差として扱った。このような値を用いて本震に対するその前震それぞれの相対震源決定をした。

 今後、相対震源決定の精度を数メートルまで高めたうえで震源周囲の応力変化を詳細に推定し、preslipモデルやcascadeモデルで説明されるような一連の前震活動の発生過程を解明していきたい。