16:00 〜 17:30
[S09P-07] 相模湾下にみられる地震活動帯の震源再決定と初動メカニズム解析
相模トラフは、関東地方の南に位置し、フィリピン海プレートが北米プレートの下に沈み込む場所である。このフィリピン海プレートについての研究は多く行われており、特にスラブ上面の位置についての研究は複数存在する。しかし、沈み込んだスラブ内で発生する地震や、沈み込む前のプレート内で発生する地震について、発生メカニズムが説明されていない地震活動が多く存在する。本研究の大目標は、これらの地震も説明可能なテクトニクスモデルの提案である。私達は最初に、相模トラフに沈み込む前のプレート内で発生する地震に着目し、発生メカニズムを検討した。
プレートが沈み込む前の相模湾の下には、伊豆半島の東方から北東方向へ傾斜した地震活動帯が存在する(石川2004 地震学会)。この地震活動帯について、その空間範囲と、震源メカニズムの報告はない。そこで本研究では、相模湾下で発生する北東へ傾斜する地震活動帯について、DD法(Double-Difference Method)によって再決定した震源の連続性や震源メカニズムの推定からこの地震活動帯の発生メカニズムを考察した。
データは、気象庁の走時データと検測値データを使用した。走時データは、2014年3月1日から2018年2月28日までに発生した、M0.5以上、深さ100km以浅の地震を使用し、DD法を用いて震源位置を再決定した。検測値データは、2004年3月1日から2018年2月28日までに発生した、深さ100km以浅M2.0以上のものを使用し、気象庁と同様の手法で初動震源メカニズムを推定した。
震源位置の再決定の結果、地震活動帯は、深さ10km付近から70km付近、また南北方向は、北緯33. 8度~北緯35. 6度の範囲内で発生していることが分かった。その分布は北東傾斜した厚み10km程度の板状であり、プレート状の構造もしくは何らかの弱面であると考えられる。さらに、初動震源メカニズム推定の結果、これらの地震のP軸は、ほとんどが地震活動帯の走向方向である北西方向に揃っていることが分かった。このことから、この地震活動は北西―南東方向の圧縮によって引き起こされていると考えられる。また、この地震活動の北端は、Toda(2008)によって提案された、二重深発面を持つ「関東フラグメント」の南端と一致する。Toda (2008)は関東フラグメントの上に沈み込んだフィリピン海スラブが接しているとしたが、今回見ている地震活動は、フィリピン海スラブと思われる活動より、100km程度南方から続いているようである。この地震活動と関東フラグメントの連続性、フィリピン海スラブとの関係に注意しながら、相模湾から関東にかけての地震活動を説明できるモデルを構築したい。
本発表では、この地震活動の詳細を述べ、地震活動から推定される周辺のプレートの幾何学的形状、相模湾下の北東方向へ傾斜する地震活動帯と関東フラグメントの関連について議論する。
参考文献
石川有三(2004) 新プレート境界と関東南部のテクトニクス 日本地震学会2004年秋季大会講演予稿集69
Toda, S., R. S. Stein, S. H. Kirby, and S. B. Bozkurt, A slab fragment wedged under Tokyo and its tectonic and seismic implications, Nature Geoscience, doi:10.1038/ngeo318, November 2008.
====図のキャプション=====
図1.相模湾下で発生する北東へ傾斜した地震活動
震源の深さを右のカラーバーで示す。左図の枠内で発生した地震を右図で表す。
東経139-140度付近に北東へ傾斜した地震活動帯が存在する
プレートが沈み込む前の相模湾の下には、伊豆半島の東方から北東方向へ傾斜した地震活動帯が存在する(石川2004 地震学会)。この地震活動帯について、その空間範囲と、震源メカニズムの報告はない。そこで本研究では、相模湾下で発生する北東へ傾斜する地震活動帯について、DD法(Double-Difference Method)によって再決定した震源の連続性や震源メカニズムの推定からこの地震活動帯の発生メカニズムを考察した。
データは、気象庁の走時データと検測値データを使用した。走時データは、2014年3月1日から2018年2月28日までに発生した、M0.5以上、深さ100km以浅の地震を使用し、DD法を用いて震源位置を再決定した。検測値データは、2004年3月1日から2018年2月28日までに発生した、深さ100km以浅M2.0以上のものを使用し、気象庁と同様の手法で初動震源メカニズムを推定した。
震源位置の再決定の結果、地震活動帯は、深さ10km付近から70km付近、また南北方向は、北緯33. 8度~北緯35. 6度の範囲内で発生していることが分かった。その分布は北東傾斜した厚み10km程度の板状であり、プレート状の構造もしくは何らかの弱面であると考えられる。さらに、初動震源メカニズム推定の結果、これらの地震のP軸は、ほとんどが地震活動帯の走向方向である北西方向に揃っていることが分かった。このことから、この地震活動は北西―南東方向の圧縮によって引き起こされていると考えられる。また、この地震活動の北端は、Toda(2008)によって提案された、二重深発面を持つ「関東フラグメント」の南端と一致する。Toda (2008)は関東フラグメントの上に沈み込んだフィリピン海スラブが接しているとしたが、今回見ている地震活動は、フィリピン海スラブと思われる活動より、100km程度南方から続いているようである。この地震活動と関東フラグメントの連続性、フィリピン海スラブとの関係に注意しながら、相模湾から関東にかけての地震活動を説明できるモデルを構築したい。
本発表では、この地震活動の詳細を述べ、地震活動から推定される周辺のプレートの幾何学的形状、相模湾下の北東方向へ傾斜する地震活動帯と関東フラグメントの関連について議論する。
参考文献
石川有三(2004) 新プレート境界と関東南部のテクトニクス 日本地震学会2004年秋季大会講演予稿集69
Toda, S., R. S. Stein, S. H. Kirby, and S. B. Bozkurt, A slab fragment wedged under Tokyo and its tectonic and seismic implications, Nature Geoscience, doi:10.1038/ngeo318, November 2008.
====図のキャプション=====
図1.相模湾下で発生する北東へ傾斜した地震活動
震源の深さを右のカラーバーで示す。左図の枠内で発生した地震を右図で表す。
東経139-140度付近に北東へ傾斜した地震活動帯が存在する