1:45 PM - 2:00 PM
[S10-07] The Nankai subduction zone paleoearthquake history reconstructions using sequential radiocarbon dating of total organic carbon of in sediment cores obtained from off Kumano
南海トラフ沿岸における古地震履歴は,Garrett et al.(2016, Quaternary Science Reviews)によってまとめられ,各地域(セグメント)の地震発生履歴を概観することができる.しかし,コンパイルされた先行研究の多くは陸域のデータを用いたものであり,震源近傍の海域のデータを用いた例は限られる.
海底堆積物は,洪水や海底地すべり,地震といったイベントを記録しており,その堆積物の年代を調べることでイベントの発生年代が推定される.通常,海底堆積物の年代は,火山灰との対比,浮遊性有孔虫の放射性炭素(14C)年代などを用いて推定することが多い.しかし,浮遊性有孔虫化石の産出に乏しく,浮遊性有孔虫の14C (14Cforam)年代測定に必要な量を得られない場合がある.また,地震履歴を推定するために,洪水性などの他の要因のものを排除し,イベントが地震性であることを確認する必要がある.
本研究では,浮遊性有孔虫化石の産出の少ない南海トラフの試料において,全有機炭素の放射性炭素(14CTOC)年代測定を高密度で測定することにより,地震性イベントの発生年代を高精度で推定した.本研究で用いた試料は,学術研究船「新青丸」のKS-14-8航海において,熊野沖の閉鎖型海盆から採取されたマルチプルコア試料,およびピストンコア試料である.この試料採取地点は,熊野川河口から南東に約80kmの地点に位置する外縁隆起帯に発達した小海盆であり,海底谷に直結していないことから,洪水などの陸からの直接的な土砂の影響を受けにくい.本研究では,海盆内の凹地(2372 m 地点)と凸地(2255m地点)からそれぞれ試料を採取した.これらの試料を,肉眼観察,X線CT画像による内部構造観察を行った後に,14CTOC年代測定用の試料をサンプリングした.測定は東京大学大気海洋研究所に設置されているシングルステージ型加速器質量分析装置を用いた.その後,得られた年代は年代較正プログラムOxCal 4.4にて補正した.補正後に得られた放射性炭素年代とOkutsu et al. (2020, JpGU Abstract)によって得られた火山灰,14Cforam年代を比較し,高密度測定14CTOC年代の有用性について検討した.
凹地のピストンコア(全長6.7m)のX線CT画像観察には,イベント層が18枚,火山灰層が1枚観察された.コアの深度に対する年代モデルにおいて,火山灰,14Cforam年代を用いて堆積速度を推定すると,深度2.5 - 3.1mで,およそ40 cm /kyrであり,それ以外の深度では,およそ70 cm/kyrである.14CTOC年代モデルでもほとんど同様の堆積速度であるが,深度2.5 - 3.1 mにおいて堆積速度が変化する傾向も見られた.
凸地のピストンコア(全長7.1m)では,イベント層が14枚,火山灰層が2枚観察された.コアの深度に対する年代モデルにおいて,火山灰,14Cforam年代を用いて堆積速度を推定すると,約30 cm/kyrであり,14CTOC年代も同様の堆積速度であった.
このことから,高密度の14CTOC年代と限定された層準における14Cforam年代,火山灰から推定された年代を組み合わせ,14CTOC年代との年代差(炭素リザーバー効果)を差し引くことで,高分解能な年代決定ができることが示された.
現在,得られているデータから,14Cforam年代との年代差は,凹地ではタービダイト層をのぞいて,813 - 1501年,凸地では1656 - 2071年古くなっており,深くなるほど年代差が広がるという傾向が見られている.今後はそれらをさらに検討することで,より高精度な年代決定が期待される.
海底堆積物は,洪水や海底地すべり,地震といったイベントを記録しており,その堆積物の年代を調べることでイベントの発生年代が推定される.通常,海底堆積物の年代は,火山灰との対比,浮遊性有孔虫の放射性炭素(14C)年代などを用いて推定することが多い.しかし,浮遊性有孔虫化石の産出に乏しく,浮遊性有孔虫の14C (14Cforam)年代測定に必要な量を得られない場合がある.また,地震履歴を推定するために,洪水性などの他の要因のものを排除し,イベントが地震性であることを確認する必要がある.
本研究では,浮遊性有孔虫化石の産出の少ない南海トラフの試料において,全有機炭素の放射性炭素(14CTOC)年代測定を高密度で測定することにより,地震性イベントの発生年代を高精度で推定した.本研究で用いた試料は,学術研究船「新青丸」のKS-14-8航海において,熊野沖の閉鎖型海盆から採取されたマルチプルコア試料,およびピストンコア試料である.この試料採取地点は,熊野川河口から南東に約80kmの地点に位置する外縁隆起帯に発達した小海盆であり,海底谷に直結していないことから,洪水などの陸からの直接的な土砂の影響を受けにくい.本研究では,海盆内の凹地(2372 m 地点)と凸地(2255m地点)からそれぞれ試料を採取した.これらの試料を,肉眼観察,X線CT画像による内部構造観察を行った後に,14CTOC年代測定用の試料をサンプリングした.測定は東京大学大気海洋研究所に設置されているシングルステージ型加速器質量分析装置を用いた.その後,得られた年代は年代較正プログラムOxCal 4.4にて補正した.補正後に得られた放射性炭素年代とOkutsu et al. (2020, JpGU Abstract)によって得られた火山灰,14Cforam年代を比較し,高密度測定14CTOC年代の有用性について検討した.
凹地のピストンコア(全長6.7m)のX線CT画像観察には,イベント層が18枚,火山灰層が1枚観察された.コアの深度に対する年代モデルにおいて,火山灰,14Cforam年代を用いて堆積速度を推定すると,深度2.5 - 3.1mで,およそ40 cm /kyrであり,それ以外の深度では,およそ70 cm/kyrである.14CTOC年代モデルでもほとんど同様の堆積速度であるが,深度2.5 - 3.1 mにおいて堆積速度が変化する傾向も見られた.
凸地のピストンコア(全長7.1m)では,イベント層が14枚,火山灰層が2枚観察された.コアの深度に対する年代モデルにおいて,火山灰,14Cforam年代を用いて堆積速度を推定すると,約30 cm/kyrであり,14CTOC年代も同様の堆積速度であった.
このことから,高密度の14CTOC年代と限定された層準における14Cforam年代,火山灰から推定された年代を組み合わせ,14CTOC年代との年代差(炭素リザーバー効果)を差し引くことで,高分解能な年代決定ができることが示された.
現在,得られているデータから,14Cforam年代との年代差は,凹地ではタービダイト層をのぞいて,813 - 1501年,凸地では1656 - 2071年古くなっており,深くなるほど年代差が広がるという傾向が見られている.今後はそれらをさらに検討することで,より高精度な年代決定が期待される.