日本地震学会2020年度秋季大会

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Room B

Regular session » S12. Rock experiment, rock mechanics, and crustal stress

[S12]PM-1

Thu. Oct 29, 2020 1:00 PM - 1:45 PM ROOM B

chairperson:Kentaro Omura(NIED)

1:00 PM - 1:15 PM

[S12-01] In-situ stress at the basement under Osaka plain -estimation of stress orientations by observation of borehole breakout in deep seismic obsevation wells-

〇Kentaro Omura1 (1.National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

地震発生過程やテクトニック変動を理解する上で,重要な物理量である地殻の原位置絶対応力を求めるには,陸域にしろ海域にしろ,水圧破砕法,応力解放法のように,掘削と複雑な孔内計測が必要であった.しかし,最近は,岩石コアを採取して室内計測する応力測定法(ASR法,DRA法,DCDA法など)や,孔内物理検層で得られる孔壁画像から,応力方位と値を推定する手法(ボアホールブレイクアウト,DITF)が適用されてきている.本発表では,一例として,防災科学技術研究所のHi-net観測網で,大阪平野にある深層地殻活動観測井でのボアホールテレビュア検層から,ボアホールブレイクアウトが観察され,原位置地殻応力方位を推定した結果を報告する.
 大阪府の此花観測井(北緯34°39’45.92”,東経135°23’22.53”,掘削深度約2033m)と田尻観測井(北緯34°23’52.14”,東経135°17’01.24”,掘削深度約1532m)において,ボアホールテレビュア検層(BHTV)が実施された.BHTVは,検層ツールのトランスデューサーを回転させ,超音波を孔壁に照射しながら孔内を上昇して,孔壁からの反射波の振幅と往復時間を濃淡表示することによって,孔壁面の画像を描く.亀裂などは,反射波の振幅が小さく,画像が黒くなる.検層ツールには磁力計が組み込まれていて,孔壁画像に写る亀裂などの方位がわかる.ボアホールブレイクアウトは,孔壁にかかる応力集中により,孔壁の一部が剪断破壊し,その部分が,崩れ,孔径が拡大する現象であり,孔壁画像で,深度方向に縦に筋が写ることで,認識される.崩壊した部分の幅から応力値が,崩壊部分の方位から応力方位が求められる.応力値には孔壁の破壊強度が直接関与し,推定が難しいため,今回は,応力方位のみ着目する.応力集中領域から90°回転した方位が原位置地殻応力の水平最大圧縮応力方位になる.
 両観測井ともに,浅部の軟岩堆積層の大阪層群から,基盤は花崗閃緑岩となり,基盤のBHTV画像にボアホールブレイクアウトが認識された.図1に此花観測井のボアホールブレイクアウトのBHTV画像の例を示す.田尻でも広い範囲でボアホールブレイクアウトのBHTV画像がえられた.その方位から,原位置地殻応力の水平最大圧縮方位は,此花でN80°E-N260°E,田尻でN65°E-N245°Eとなり,+-15°程度の誤差が見込まれる.この応力方位は,周辺の北近畿地域における,東西方向の圧縮応力方位に整合的な結果になっている.BHTV検層は,標準的な検層種目となっており,観測井など孔井掘削する機会に,あわせて実施することにより,条件が適合して,ボアホールブレイクアウトが形成されれば,原位置地殻応力を求めることができる.