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[S12P-03] 断層摩擦発熱指標としての炭質物の熱熟成反応3:繰り返し地震イベントの影響の実験的評価
地震下において解放されるエネルギーの大部分が断層での摩擦発熱であるため、この摩擦熱を推定することが地震のメカニズムの理解へとつながる。炭質物は加熱に伴い弱く複雑な化学結合が分解され、官能基の脱離が起こり、最終的にはグラファイト構造への変化が見られる。この反応は不可逆的であるため、先行研究では赤外分光法・ラマン分光法や質量分析法、ビトリナイト反射率測定、元素組成分析など様々な手法が試されてきた。しかし、これらは繰り返す地震による累積加熱の影響を議論していない。よって、本研究では炭質物の熱熟成反応における累積加熱の影響を測定するため、室内での加熱実験および分光分析を実施した。試料は瀝青炭と無煙炭の2種類で、それぞれをガラス管に真空封入後、管状加熱炉において100, 300, 500, 700, 900, 1100, 1300℃ での40秒間加熱を、累積加熱のため1, 10, 100回行った。その後、実験前後の試料両方で赤外分光分析・ラマン分光分析を行った。結果として、700℃以下での加熱では各温度各回数において違いが見られなかった。しかしながら、900℃以上では温度によっては有意な差が認められないものもあるが、複数の温度において加熱回数が多いほど熱熟成が進んでいることが確認された。よって、このことから地震時の短いタイムスケールにおける摩擦発熱においても、繰り返し熱が与えられた場合には熱熟成が進行してしまうと結論づけられる。これにより、先行研究における炭質物を用いた断層摩擦熱推定では過大に評価されている可能性があるといえる。