日本地震学会2020年度秋季大会

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Poster session (Oct. 30th)

Regular session » S12. Rock experiment, rock mechanics, and crustal stress

S12P

Fri. Oct 30, 2020 4:00 PM - 5:30 PM ROOM P

4:00 PM - 5:30 PM

[S12P-04] Acoustic monitoring of the internal state of gouge layer during friction experiments

〇Kohei Nagata1, Masao Nakatani2, Shingo Yoshida2 (1.Meteorological Research Institute, 2.Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)

断層面の力学特性が固体同士の接触具合だけで決まる岩石間の摩擦とは異なり,ガウジ層を含む断層においては,時間依存の固体間真実接触(GPaオーダーの応力下にある)面積 [e.g., Dieterich (1972), Dieterich and Kilgore (1994)] だけでなく,粒子位置の大規模な幾何学的再配置(例えば、応力鎖の形成など)が,断層の強度に影響を与える.後者に属すると考えられるガウジ層に特有の強度変化としては,slide-hold-slide試験におけるhold開始時の剪断除荷に依存した強度回復が挙げられる[Nakatani (1998)].また、時間に依存した強度回復が,hold時の剪断応力が低い時には見られなくなることが報告されているが、これらに対応して断層内部でどのように状態変化が進行しているかは明らかではない。本研究では,透過弾性波を用いた断層内部状態のモニタリング手法[Nagata et al. (2008, 2012)]を用いて,摩擦実験中のガウジ層を含む断層内部状態の変化の様子を観察した.

摩擦実験は、Nagata et al. (2008)と同じ構成による2軸直せん断試験により行い、#200の篩を通過した粉砕石英を庵治花崗岩ブロックの間に挟んでガウジ層とした。ブロック間の相対速度または応力を制御することで、slide-hold-slide試験、velocity step試験を行い、その間、ガウジ層を透過する弾性波(P波)の振幅の連続観測を行った。弾性波は、1 MHzに中心周波数を持つトランスデューサ(Panametrics V103RM)を1 MHzのサイン波1周期で励起して1 kHzの頻度で送信し、ガウジ層を透過して受信された信号を10回スタックしてその全振幅を連続記録した。透過弾性波がガウジ層の厚さに対して長周期とみなせるよう、ガウジ層の初期層厚はできるだけ薄く準備し、0.5 mm、1 mmの2パターンの実験を行った。

実験の結果,初期層厚によらず、以下の結果が得られた。

・slide-hold-slide試験のhold後の載荷に伴い、hold時間の対数に比例して増加するピーク(P1)を持ち比較的短い距離(~10 μmオーダー)で弱化するせん断応力の山と、hold時の剪断応力に依存したピーク(P2)を持ち比較的長い距離(~mmオーダー)で弱化するせん断応力の山が見られ、P1はhold中のせん断応力が低いほど小さくなる。これらはNakatani (1998) の観察と同様である。
・P2もhold時間に弱い依存性を持ち、P1が0とならない程度の実験条件の範囲では、P1とP2の和はせん断応力によらずにhold時間の対数に比例する。
・hold開始時には剪断応力の低下に伴う非時間依存の透過振幅の増加(ΔACS)が見られ、hold中にはhold時間の対数に比例した透過振幅の増加(ΔAage)が見られた.ΔACSはP2に、ΔAageはP1に対応すると考えられるが、P1がほとんど見られないような場合でもΔAageは観察され、むしろhold中のせん断応力が低いほどΔAageが大きい傾向が見られた。
・hold後の再載荷に伴う短距離での透過振幅の減少(ΔASSW)と、その後P2の弱化が見られる間、変位に対して線形に進行する透過振幅の減少(ΔALSW)が見られた.
・ΔAageとΔASSWの変化量は等しく、ΔACSとΔALSWは等しい

これらの観察からは,P1とP2はそれぞれ異なる基本的には独立なメカニズムに起因して生じており、その弱化過程も独立に進行していることが示唆される。また、断層運動は両者のうち高い強度を持つ方に支配されると考えられる。

透過振幅は、これら2つの強度変化のメカニズムに対応して変化することが確認されたものの、hold後の再載荷やvelocity step試験時の透過振幅の変化の様子からは、巨視的すべり時の変位が生じているガウジ層中での主断層の接触状態だけではなく、主断層以外のガウジ層中の状態変化にも影響を受けていることが示唆される。主断層と複数の均質な副断層に速度・状態依存摩擦構成則を仮定し、摩擦強度の発展則としてNagata et al. (2012) に基づき修正したAgeing Lawを用いる単純化したモデルにより、初期層厚の異なる実験双方で見られたせん断応力と透過振幅の変化を概ね説明することが可能である。